県と民間の協力でスキルを生かせる就職をサポート

 前田さんの情報やスキルは、平野さんを通して広島県庁の担当者へと伝えられ、その担当者経由で「広島経済同友会」と共有された。その後、「広島経済同友会」の代表幹事(当時)を務めていた森信秀樹さんが、会員企業に求人を打診。広島県にある商業施設、「広島マリーナホップ」の運営会社社長が前田さんの働き方に理解を示し、就職へとつながったという。

 決め手となった理由の一つが「女優活動」だった。前田さんは、セルフプロデュースの一環として、SNSを通じて女優活動を発信していた。そして、「広島マリーナホップ」では、SNSによる広報活動の必要性を感じていた。そこで、マッチングが実現したのである。

 前田さんが自ら就職活動を行っていたときには、なかなか決まらなかった仕事。なぜ、「移住者しごとマッチングシステム」では、トントン拍子に就職へとつながっていったのか。その理由をマッチングシステムの創設に携わった、前述の森信秀樹さんに聞いた。

前田さんの仕事は広報担当。ライターで培った文章力を生かして、プレスリリースも作成している
前田さんの仕事は広報担当。ライターで培った文章力を生かして、プレスリリースも作成している
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社長の視点で必要な人材を見極められるマッチングシステム

森信建設 代表取締役社長 森信 秀樹さん
森信建設 代表取締役社長 森信 秀樹さん
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 「広島県の多くの中小企業は、人材を求めています。しかし、大手の転職サイトは掲載料が高額なことも多く、頻繁に求人を載せることは難しい。また、ハローワークでは、求める人材像を十分に伝えられないこともある。結果として、なかなか思うような人材を得られていないのが現状です。そんなもどかしさを解消するために始めた取り組みが、東京の『ひろしま暮らしサポートセンター』と『広島経済同友会』が連携した『移住者しごとマッチングシステム』です」

 これは、平野さんをはじめとするひろしま暮らしサポートセンターが、相談時に引き出した移住者の情報、例えば、書類上だけではわからないようなスキルや人柄などを、「広島経済同友会」の会員である119社にメールなどで共有する仕組み。

 「会員でない企業で、マッチングがうまくいきそうな企業があれば、私が直接連絡することも多いですよ。広島県の職員、広島経済同友会、移住希望者が密に連絡・相談をするといった、人と人とのつながりがあるからこそ、できることですね」

 「前田さんのケースは、まだ『移住者しごとマッチングシステム』が正式運用される前のテストケースのようなもの。『女優でSNSを使って発信をしている』という情報と、たまたま広報担当が辞めた『広島マリーナホップ』の情報がマッチしたので、双方に紹介させてもらいました。このシステムの最大のメリットは、企業のトップに情報が伝わることです」

 企業の社長は長期的な目線で経営を見ているので、今必要な人材という観点に加えて、今後の発展に必要な人材かどうかも考えられるという。

 「その場合、その人に合わせて仕事を創り出すことができます。『広島マリーナホップ』では、前田さんがこれまで培ってきた経験や女優という特殊なスキルを生かして、彼女が出演する動画を使った広報活動を始めました。うまくマッチングできた事例だと思います」

 「首都圏に住む方が移住を考えているなら、まずは、『ひろしま暮らしサポートセンター』に行って、話をしてみてほしい。ここは、住むだけでなく、働くことも重要視して相談に乗ってくれますから。気になる企業や先輩移住者がいれば、広島県が片道の運賃を出してくれるので、実際に足を運んで話を聞くこともできる。まずは第一歩を踏み出してはどうでしょうか」

森信さんは、広島市で4代続く「森信建設」の社長。その人脈を生かして、移住者の就職をサポートしている
森信さんは、広島市で4代続く「森信建設」の社長。その人脈を生かして、移住者の就職をサポートしている
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