「女優を諦めないで」。広島移住を後押しした一言

 「移住をするなら広島」。そう決めた前田さんは、まず、インターネットで<広島 移住>と検索してみた。すると、最初に表示されたのが、有楽町の東京交通会館にある「ひろしま暮らしサポートセンター」だった。そこでの出会いによって、前田さんの移住は大きく動き出す。対応したのは、ひろしまライフスタイリストの平野奈都子さんだ。

 「平野さんは、とにかく聞き上手。漠然と広島に移住したいことを話したら、親身になってじっくりと話を聞いてくれました。実はそのとき、女優活動は少しお休みしようと思っていて、相談もしなかったのですが、いつの間にか話を引き出されて、『辞めたらもったいないよ。まだ、やりたい気持ちがあるのなら、女優と仕事が両立できる道を探してみようよ』と励まされました」

 以前、広島に滞在したときに感じた人の温かさ。それは、移住を相談した平野さんにも感じたという。前田さんはその感覚を「押し付けがましくない温かさ」「相手の気持ちや立場に寄り添ってくれる優しさ」と表現する。

移住への不安も大きかったが、平野さんや県職員のサポートで徐々に心配は薄らいでいったという
移住への不安も大きかったが、平野さんや県職員のサポートで徐々に心配は薄らいでいったという
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 もちろん、すべてがトントン拍子に進んだわけではなかった。東京に住みながら広島で仕事を探すのは簡単なことではない。東京のハローワークを通じて広島の求人をチェックしていたが、なかなか就職活動は進まなかったという。

 「できれば、仕事が決まった状態で移住をしたかったのですが、東京から応募しても、書類選考で落とされる。意を決して、先に移住してしまおうかと思っても、仕事がないと借りられる賃貸物件も少ない。結局、悪循環ですよね」

 それでも、地道に広島県への移住セミナーなどに通っていた前田さん。転機になったのは、セミナーで出会った県職員のサポートだった。

 「就職に苦労している話をすると、県職員の方が、『仕事も住むところもサポートしてこそ私たちの仕事。前田さんのスキルや人となりは平野からしっかりと聞いているから、それも含めて、広島の社長が集まるところで紹介してもいい?』と言ってくれました」

 このとき、広島県は、他の都道府県にはない移住促進策「移住者しごとマッチングシステム」の策定を進めていた。前田さんは、このシステムを利用して移住の道を探ることにした。