パブリックアートの「場」に

 吹き抜け部分などの共用部分は、森美術館の館長である南條史生氏の監修による、現代アートの巨大な展示空間にもなっている。オープニング展示は、世界的に知られる日本人アーティストの草間彌生氏によるインスタレーションで、2018年2月25日まで展示する。白地に赤いドットが入った巨大なカボチャをイメージさせる作品で、合計14個が3種類の異なるサイズのバルーンでつくられた。あたかも、吹き抜け空間を彩るシャンデリアのように天井から吊るされている。

 このほか、堂本右美氏の絵画作品「民」や、大巻伸嗣氏の彫刻「Echos Infinity-Immortal Flowers-」、船井美佐氏の鏡を使った作品「楽園/境界/肖像画」が通路やエレベーターホールに常設展示されている。堂本氏の「民」では、躍動感ある「かたち」が表現され、背景色との対比によって奥行きのある広大な空間の広がりを感じさせるもの。開放的で無限のような空間に誘われそうな印象だ。大巻氏の彫刻「Eohos Infinity-Immortal Flowers-」は江戸小紋の柄である朝顔や桔梗、菊の花や蝶の形を組み合わせたもの。江戸時代の美意識の象徴を表現している。船井氏の「楽園/境界/肖像画」は楽園と境界がテーマで、鏡を使うことで現実と絵画の空間を交差させようとした。絵の前に立つと絵の中に映り込み、見ている人が絵の主役になるわけだ。

 そのほか、内部の2カ所には高さ約12メートルの壁面(リビングウォール)に、対となる2つのアート作品を展示した。一方は、植物学者兼アーティストのパトリック・ブラン氏による、日本に生息する固有種の植物を織り交ぜたアート作品。もう一方は、猪子寿之氏が代表を務めるチームラボによるデジタルクリエーションのアート作品である。共通のコンセプトは「“Life Circulation”生命の循環」でスペースコンポーザーであるジェ イ・ティー・キュー(JTQ)の谷川じゅんじ代表がプロデュースした。本物の植物を使った自然と、LEDによる“自然”を対にすることで新たな表現に挑んだ。ブラン氏の作品「Living Canyon」は、土を使用しない垂直な平面を生きた植物で覆った。太陽の光に照らされた崖の頂上から、影に覆われた深い谷底を表現している。どんな環境下でも多様な植物が生息している状況を通じて、「美」「創造力」などを表現。チームラボの「Universe of Water Particles on the Living Wall」は、滝の様子を物理的な水の運動を計算したシミュレーションで表している。時間とともに色合いを変える仕掛けも施した。

共用部分に飾られている、堂本右美氏の絵画作品「民」。森美術館の館長である南條史生氏の監修による(写真左)
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大巻伸嗣氏の彫刻「Echos Infinity-Immortal Flowers-」は江戸小紋の柄である朝顔や桔梗、菊の花や蝶の形を組み合わせたもの
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船井美佐氏の「楽園/境界/肖像画」は、絵の前に立つと絵の中に映り込み、見ている人が絵の主役になる
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高さ約12メートルの壁面に、対となる2つのアート作品を展示。写真は、植物学者兼アーティストのパトリック・ブラン氏による、日本に生息する固有種の本物の植物を織り交ぜたアート作品
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もう一方は、猪子寿之氏が代表を務めるチームラボによるデジタルクリエーションのアート作品で、滝の様子を物理的な水の運動を計算したシミュレーションで表している
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(左から)チームラボの猪子寿之氏、JTQの谷川じゅんじ氏、パトリック・ブラン氏
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