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「いい作品とは“クオリティー”が高い作品である」

 個人的な好き嫌いをのぞけば、多くの人がなんとなくそう捉えているだろう。実際、「あのアニメは“クオリティー”が高い」「あそこの局は“良質”な番組を放送している」というように、クオリティー(質)という言葉は、映画やアニメ、テレビ番組、ゲームなどあらゆるコンテンツを語る際によく使われている。だが、ごく一般的に使われる言葉なのに、根本的なことが実はよくわかっていないようにも思う。それは、

「そもそも“クオリティー”って何なのか?」

 という問題だ。例えば「あの作品はクオリティーが高い」と言う場合、それが具体的に何を指しているのか、よくわからないことが多い。「凝った作り」や「きめ細かな演出」、「映像が安っぽくない」「考え抜かれたストーリー」「お金や手間をかけて作られている」といった様々な要素を感じ取って、それらを“クオリティー”という一語に集約していたりする。とても便利な言葉だが、もう少し具体的に「コンテンツの“質”とは何なのか?」について理解を深められないかと考えていた。

 そんなとき、川上量生さん(KADOKAWA・DWANGO社長)の著作『コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと』(NHK出版新書)に興味深い内容を見つけた。プロデューサー見習いとしてスタジオジブリに出入りするようになった川上さんは、アニメ・プロデューサーの石井朋彦さんからこんな話を聞いたという。

「ジブリの作品が成功したのは情報量が多いからだとアニメ業界では分析されていて、それでみんなジブリみたいに線の数が多いアニメをつくるようになったんですよ」

 ジブリ作品は、誰もが“クオリティーの高さ”を認めているが、それには「情報量(=線の数)」が関係しているという。IT業界などではなじみ深い「情報量」という言葉が、アニメ業界でも頻繁に使われていることに川上さんは驚いた。さらに、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーからは、こんな話を聞かされたという。

「ジブリの映画は情報量が多いから、いちど見ただけじゃ理解できないので、なんども映画館に来てくれるし、何回、再放送しても視聴率が下がらないんですよ」

 確かに、今やほとんどの人がすでに『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』など過去のジブリ作品を見ているのに、再放送のたびに高視聴率を獲得する現象は謎だ。視聴者はストーリーを知っているので、物語自体に驚きなどの“差異”を感じているわけではない。何度も見ているのに惹きつけられてしまうジブリ作品の魅力には、「情報量」が関係しているという見立ては興味深かった。

 この「情報量」という概念は、デジタルの世界に当てはめるとよりイメージしやすい。動画の画質を決める要素に、「ビットレート」という単位がある。「bps(=bits per second)」と表記され、動画が1秒間に何ビットのデータでできているかを示すものだ。例えば、YouTubeなどで見る場合はせいぜい2Mbpsで十分だが、地上デジタル放送では15Mbps以上で放送されている。たとえ同じ内容の動画でも、ビットレートが低ければ画面がざらつき、高ければよりきめ細かく映る。つまり、ビットレートの値が大きければ大きいほど、映像のクオリティー(質)は“高画質”になるのだ。

 細かく緻密な線で描かれているジブリ作品は、いわば「ビットレートが高いコンテンツ」と言えるだろう。そして、その分、データ量(情報量)も大きいと言える。すると、次のように考えられないだろうか。

 「作品のクオリティーは“情報量(ビットレート)”で決まる」