「どうしたら、新しい企画やアイデアが思いつくんですか?」

 と聞かれることがある。「それが分かれば、誰も困らないですよ……」と言いたくなる質問だが、こうした問いの背景には「企画やアイデアは“思いつくもの”である」という先入観があるように感じる。ある日突然、何かが天から降ってくるようにアイデアがひらめく。そんなイメージを多くの人が抱いているのかもしれない。

 だが、私はそうではなくて、

「企画やアイデアは“組み合わせ”から生まれる」

 と捉えている。否、企画やアイデアに限らず、「世の中の新しいモノは全て“組み合わせ”から生まれる」と言っても過言ではないと思うのだ。

 例えば、気体の「水素」と「酸素」が結合すると、液体の「水」という全く別の性質のものに変化する。「オス」と「メス」が交わることで、それぞれのDNAを合わせ持った「新たな個体」が誕生する。あるいは、木や土といった「材料」と「職人の技」が合わさって「見事な工芸品」や「建築物」が作られる。このように、そもそも私たちが暮らす世界は、無数の組み合わせによって成り立っている。

「何かと何かを組み合わせると、新しい別なものが生まれる」というのは、ヒット商品にも当てはまる。例えば、「ポケモンGO」は、スマホ向け位置情報ゲームアプリ「Ingress」とおなじみの「ポケットモンスター」の世界観を組み合わせたものだ。元々Ingressは、拡張現実(AR)を生かした知る人ぞ知るマニアックなゲームだったが、ポケモンと合わさったことで世界的な大ヒットとなった。また、そもそもIngress自体も、Googleマップの位置情報サービスと陣取り合戦を掛け合わせたアプリだった。

 組み合わせは、必ずしも足し算や掛け算ばかりではない。あえて何かを制限したり、省いたりする引き算の組み合わせもある。「Twitter」は、「従来のブログ機能」にあえて文字数を「140字に制限する」という“引き算”を組み合わせた結果、膨大な登録者数と投稿数に拡大したサービスだ。「コンタクトレンズ」は、「メガネ」という製品から「フレームを取り除いたもの」と捉えられるだろう。

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