『哲子の部屋』『ブレイブ 勇敢なる者「硬骨エンジニア」』など、独自の切り口のテレビ番組を企画・制作するNHKエデュケーショナルの佐々木健一氏が展開するコンテンツ論の第28回。

 前回のコラム(“伝える技術”を高める付箋紙活用術「ペタペタ」)では物事を伝える際の基本である「構成」について述べたが、番組の作り手である私から見ても、最近の日本のテレビ番組は、「構成がダメになっているなぁ」と感じることが多い。それは特に「ブリッジ演出」の多用に表れていると思う。

 私が指摘するブリッジ演出というのは、スタジオやロケ映像の合間に“看板”のように短くキーワードなどを挿入する演出のこと。印象的なアタック音とともに表示する場合が多い。芸能人が街をブラブラ歩く「街ブラ番組」などでは定番の演出だ。今やバラエティー番組や情報番組に限らず、ドキュメンタリー番組や報道番組でも見られる、ごくありふれた演出である。

 しかし、テレビ番組で頻繁に見かけるブリッジ演出は、映画作品ではほとんど見かけない。物語に没入したいのに、いちいち流れを断ち切る“看板”が登場したら、観客は興ざめするだろう。

 では、なぜ、テレビ業界ではブリッジ演出がこれほど流行しているのか?

 テレビ視聴はCMなどで中断され、チャンネルを頻繁に変えるザッピングが前提だ。もともと流れを寸断されることが多いメディアなので、構成が“細切れ”になったのかもしれない。しかし、今ではCMが入らないNHKの番組でもブリッジ演出をよく見かける。

 私は、これほどブリッジ演出が氾濫した要因には、作り手の都合が関係していると見ている。短くブリッジを挟むことで構成上、強制的に“区切り”を設けることができ、ダラダラした展開にメリハリをつけられる。それによって見かけ上、リズムやテンポも上がるのだ。

 そもそも構成というのは、項目や要素を整理し、その並べ方に工夫を凝らして感情的な起伏などの流れを作ること。だが、それには手間も熟練も必要だ。各シーンをぶつ切りにして、その間を強引にブリッジ演出でつなぐ方がはるかにラクで都合がいい。

 また、編集段階に“後づけ”できる点も大きい。街ブラ番組やドキュメンタリー番組のロケは、常に面白いことが起きるわけではない。また、面白いシーンだけを編集しても、内容がつながらない。だから、本来は“つなぎ”になるシーンやカットを撮影してくるのだが、編集時にブリッジを挟んで済ませば、そんなことも必要なくなる。

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