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『哲子の部屋』『ブレイブ 勇敢なる者「Mr.トルネード」「えん罪弁護士」』など、独自の切り口のテレビ番組を企画・制作するNHKエデュケーショナルの佐々木健一氏が展開するコンテンツ論の第2回。平日昼間に満席になる名画座の秘密とは?

 「いったい、このにぎわいは何だ……!?」

 昨年末、どうしても見ておきたい映画があり、小さな名画座を訪れた私は、予想外の光景に出くわし面食らった。

 目当ての映画は『シング・ストリート 未来へのうた』。去年公開されたアイルランド映画だ。舞台は1985年のダブリン。冴えない男子高校生がひと目惚れした女の子を振り向かせるためにバンドを組み、80年代の洋楽ヒットの影響を受けながら成長する甘酸っぱい青春物語だ。

 映画好きの間でかなりの評判で、公開から日が経っていたが、東京・飯田橋の名画座「ギンレイホール」で再上映していると知り、早速出掛けた。そもそも名画座へ行くのも久しぶり。主に旧作映画を上映する名画座はレンタルビデオやDVD、シネコンの普及で90年代ごろから軒並み閉館に追い込まれた。その数少ない生き残り、ギンレイホールを訪れた。

 「最初の上映回だし、客席はガラガラだろうな……」

 ところが、映画館の前にはすでに数人の行列が。それだけでなく、ロビーもお客さんでごった返している。好評とはいえ、とっくに公開時期が過ぎた知る人ぞ知る作品なのに……。

 「なんで、こんなにお客さんが来ているんだ?」

 困惑しながら列に並び、ようやく劇場に入ると約200席がほぼ満席。前後左右の席をシニア世代に囲まれ、戸惑った。

 「これって、デュラン・デュランとかA-haとか、80年代の洋楽が流れる青春映画だよなぁ。明らかに客層が違うような……」

 熱気あふれる劇場を埋める大半は高齢者で、主婦層の姿もちらほら。『シング・ストリート』は、彼らが積極的に選ぶような作品とは思えない。いったい、何が彼らをここへ向かわせたのか。