『哲子の部屋』『ブレイブ 勇敢なる者「硬骨エンジニア」』など、独自の切り口のテレビ番組を企画・制作するNHKエデュケーショナルの佐々木健一氏が展開するコンテンツ論の第24回。

「これからは、“コンテンツの時代”になる」

 こうした声を耳にするようになった。映像業界で言えば、一昔前は「テレビか、映画か」という二択だったが、今ではNetflix、Amazonプライム・ビデオなどの動画配信サービスも独自コンテンツを制作するようになり、まさに百花繚乱の様相を呈している。

 各媒体は今後、他とは違う良質なコンテンツをどれだけ抱えているかが勝負になるだろう。客を呼び込める魅力的な作品をどれだけそろえているかによって、視聴者数や契約者数も変動するからだ。

 コンテンツ優位の時代になれば、作り手がもっと尊重され、しかるべき対価も制作会社や現場のクリエイターにしっかりと還元されるようになるのではないか。そんな期待を抱いている。実際、世界ではそうした動きがすでに起きている。

 このコラムでも紹介し、先日の第90回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞に輝いた『イカロス』は、Netflixが500万ドル(約5億5000万円)で独占配信権を購入した。ドキュメンタリー作品としては異例の金額だ。また、同じくNetflixは人気ドラマ『glee』などを手がけた敏腕テレビプロデューサー、ライアン・マーフィーと5年で3億ドル(約330億円)という破格の契約を結んだ。

 だが、こと日本のテレビ業界においては“コンテンツの時代”が訪れても、制作会社やクリエイターは本当に報われるのだろうか、という懸念がある。というのも、日本では未だ番組の権利は制作会社ではなく、放送局が保有しているケースが大半を占めているからだ。

 番組のエンディングに流れるスタッフロールの最後には、「製作・著作 ○○」という表記が出るのをご存じだろう。この「○○」に当たる部分には大抵、放送局名が表示される。それはつまり、「番組の著作権が放送局に帰属している」ことを示している。しかし、欧米の先進国は、こうした日本の現状とは異なる。

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