年を取ると、「今どきの若者は……」と口走るようになるというが、よわい四十を迎えた私はむしろ、「今どきのおじさんは……」と思うことのほうが圧倒的に多い。

「お前も40歳なんだから、おじさんだろう」といわれればその通りだが、私がいう“おじさん”とは今、50歳前後で、会社などの組織でさまざまな決定事項に対し権限を持つ世代のことだ。間接業務が主で、時代の変化や現場感覚に疎い人を指している。

  年齢はひと回りほどしか違わないが、同世代のテレビ番組制作者と会っても「困ったもんだねぇ……」とひとつ上の世代の無理解や感覚の違いがしばしば話題となる。

「なぜ、こんなにも分かり合えないのか?」

  その原因は、各個人の問題というより、ある時期を境にした“世代間ギャップ”にあるのではないかと思うようになった。

  結論を先にいえば、40代以下と50代を隔てているものの正体は、「1995年」にあると見ている。この年はご存じの通り、マイクロソフトの『Windows95』が発売された年だ。これ以降、それまで一部のユーザーに限られていたパソコンなどのIT機器を、あらゆる人が使うようになった。まさに“IT革命元年”ともいえる年だ。

 1995年に高校生や大学生だった私たちの世代は、先入観なくITを受け入れ、その後の進化にも抵抗感がない。PCやスマホを操作する際も、マニュアルなどはほとんど読まない。実際に触りながら、感覚的に操作を習得していくのが当たり前だ。一方、社会人になってから1995年を迎えた世代は様子が異なるようだ。

  以前、ある“おじさん”からPCの操作を聞かれ、横に立って教えたものの、彼の操作を見て仰天した。「コピー」や「貼り付け」などの操作を行うときに、右クリックを一切使わなかったのだ。その都度、逐一「スタート」や「ホーム」に戻り、そこから選択し直していた。もちろん、ショートカットなどを使う素振りもない。

「なんてマニュアル的で面倒臭いことを……」と目を疑ったが、その操作が体に染みついているようだった。しかも、彼は普段、ノートPCを持ち歩き、どちらかというと“ITを使える風のおじさん”だった。私はそれ以来、同じPCやスマホを使っていても、世代によって全く使い方や接し方が違うのではないかと疑うようになった。

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