「ななつ星in九州」「TRAIN SUITE 四季島」「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」――。超豪華なクルーズトレインが話題になっているが、数十万円という料金といい、何十倍という応募倍率といい、庶民には高嶺の花だ。現役世代にとっての最適解は、日帰りかつ数万円で車窓と食事を楽しめるレストラン列車だろう。

 JR九州の「JR KYUSHU SWEET TRAIN 或る列車」はその一つ。しかも、ななつ星譲りの豪華な内装が売りだという。2万4000円(JR九州企画実施分。2人利用の場合)でどれだけななつ星の雰囲気を享受できるのか。実際に乗ってみた。

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「或る列車」の案内状。団体専用列車として運行されるので、時刻表への掲載はなく、切符もない
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 今回乗車したのは9月まで運行中の「大分コース」の午後便。日田駅を14時48分に出発し、大分駅に17時11分に到着する、約2時間30分の行程だ。日田駅はホームこそ古びた雰囲気ながらも、駅舎はJR九州おなじみのデザイナー・水戸岡鋭治氏の手でリニューアル。日田杉をフローリングなどに使い、待合室はまるで図書館のような雰囲気だ。日常的にこんなぜいたくな空間を利用できるJR九州の利用客はうらやましい限りだ。

日田駅の駅舎は国鉄時代のものだが、リニューアルで黒一色に大変身
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改札横の待合室には本棚や広いテーブルなどがあり、まるで図書館のよう
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 出発時刻の15分ほど前に、或る列車がホームに入ってきた。カラーは何と金ピカのゴールド。車体の下半分には唐草模様のエッチングが入っていたり、ド派手なデザインだ。

 或る列車のモチーフは「九州鉄道ブリル客車」とされる。九州鉄道はJR九州の前身となる会社で、明治末期、米国のブリル社に豪華客車を発注した。客車は完成後、日本に運ばれたものの、そのころには九州鉄道は国有化されて姿を消していた。そのため当初予定されていた豪華列車としてではなく、職員用の教習車両などとして生涯を終え、表舞台に立つことは少なかったという。戦前の鉄道雑誌に「或る列車」として紹介されたことから、この愛称が定着したといわれる。

ゴールドの車体が奇抜な「或る列車」。もともとはローカル線を走る平凡なディーゼルカーだった
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 もっとも、豪華車両として設計されたとはいえ、実際に黄金色だったわけではないようだ。或る列車が黄金色というイメージを創作したのは、鉄道模型愛好家の原信太郎氏。車庫に半ば放置されていた或る列車を見た原氏は、「もし当初のように豪華な車両として使われていたらどうなっていたか」を想像し、創作を加えて模型を作った。これが現在、横浜市の原鉄道模型博物館に展示されている或る列車だ。従って、JR九州に“甦った”或る列車は、原氏と水戸岡氏、2人の手によって大胆に創作されたものといえる。

“元ネタ”となった原信太郎氏作の「或る列車」(上段の模型)。こちらもゴールドの車体だ
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