投資に対して期待しないようにするのは「傷つくから」

――大型のIPなどの規模感を軸にするより、ミドルクラスの面白いゲームの打率を上げていくところとも相通じるかもしれませんね。

片岸氏: 「手数を打つ」ことはすごく大事にしています。DMM GAMESはアダルトゲーム市場を押さえていて、そこの勝算の高さを利用しながら、潤沢な開発資金を新規IPに投資していく、というのが大枠の戦略です。

 多くのゲーム会社が新規IPへの投資リスクを回避したくなると思います。我々は10本作って1本当たればいいという程度の考え方で投資しています。手数で勝負するのは我々しかできないので、そこを大事にしていきたい。中ぐらいのIPをコツコツ作って、たまにボーンと当たるものが出たらいい。メガヒットは当てようと思っても当てられませんから、手数を出していくしかないということです。

――ライトノベルを出している出版社の方に「中くらいのヒットシリーズがたくさんある状態が理想的」とお聞きしたことがあります。

片岸氏: ああ、近いかもしれないです。「サブカルをつくろう」というのが、僕のゲームに対する基本姿勢です。時々、サブカルの中から『艦これ』とか『刀剣』みたいな大ヒットが出てきたらいいなと。なので、手数は結構大事です。

――さきほど「10本に1本」とおっしゃっていましたが、打率のめどや目標はありますか。

片岸氏: 逆に「いくら使えるかな」と考えて、来年の業績目標を考えています。「これだけ稼がなきゃいけない」という指標ではやっていないんです。今年の開発費はこれだけ使える、という観点でタイトルを仕込んでおいて、来年蓋が開いたら「もうかっていた/もうかっていない」という見方です。現場には逐次KPI(重要業績評価指標)を出せとか、一切言わない。「いくら稼ぎます」と宣言はさせますけど、うまくいかなかったからどうこうは言わないですね。

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――太っ腹ですね。

片岸氏: 太っ腹じゃありません。そうじゃないと健全じゃないと思うからです。上場もしていませんしね。実はゲームに限らず、あんまり投資については期待しないようにしていて。

――どうしてですか。

片岸氏: 傷つくからです(笑)。新規開発したものは、ことごとく「外れる」と思ってやっているんです。だから(心が)軽傷で済む。うまくいったらラッキーぐらいの気持ちでいないと、本当に心が折れたり、あるいは、効率重視に走ってしまいますからね。

 KPIの値を細かく見て、ギリギリやらずに済むのは、上場していないゆえの強みかもしれせん。亀山(敬司DMM会長)からも「いくら稼げ」とかは言われていませんし。こちらから「いくら欲しいですか」と言っているのですが「いいよ、使えよ」というのです。分かりました、と、開発に投資して、なるべく残さないように頑張るんですけど、なかなか使いきれません。

 これは映画製作でも同じだと思うんですが、新しいプラットフォームが世に出始めたときって、ブワーッと花開いて成功事例が生まれ、勝ち方が見えてくる。すると、今度はグラフィックを良くして、演出を良くして、キャラクターにお金をかけてと、一本一本のディールがどんどん大きくなっていく。打率の高い投手に集中して予算が大きくなるという現象になってくる。これは現実にゲームの世界でも起きています。