カプコンの大きな特徴は、息の長い“ミリオン級”の人気シリーズタイトルを多数抱えている点。しかし、シリーズはタイトル数を重ねるごとにファン層の年齢も上がってくる。放っておけば、当初想定していたユーザー層とのズレが生じ、ブランドを毀損する恐れもある。この問題を克服するには、既存のファン層の期待を満たしつつ、なおかつ当初想定した“若いターゲット”にもアピールしなければならない。

 そうした難しいテーマに挑みながら、2015年は『モンスターハンタークロス』で結果を出した。さらに課題だったモバイルコンテンツについてもヒットを飛ばし、飛躍のきっかけをつかみつつある。ここ数年力を入れてきた、コンテンツのインターネット配信も順調だ。国や地域を問わず、ファンの元にゲームを届けられる環境が整った今、新作『ストリートファイターV』で14カ国語に対応するなど、グローバル展開に拍車を掛ける。ゲーム産業の変革に、常に目を光らせているカプコンの辻本春弘社長(COO)に最近の動向、そして2016年の戦略について聞いた。 (聞き手/酒井康治=nikkei BPnet、写真/稲垣純也)

辻本春弘(つじもとはるひろ)
辻本春弘(つじもとはるひろ)
カプコン 代表取締役社長 最高執行責任者(COO)
1964年、大阪府生まれ。大学在学中よりアルバイトとしてカプコンで働き始め、機器の修理などの現場業務の経験を積む。1987年、大学卒業と同時にカプコンに入社。当時の新規事業だったアミューズメント施設運営事業の立ち上げに参加し、業界ナンバーワンの高収益ビジネスモデルの確立に貢献。1997年には取締役に就任し、以後は家庭用ゲームソフト事業の強化に注力。常務取締役(1999年~)、専務取締役(2001年~)を経て、2004年からは全社的構造改革の執行責任者として、コンシューマ用ゲームソフト事業の組織改革(開発・営業・マーケティングを一体化した組織への改革)、海外事業の拡大などに携わる。2006年に副社長執行役員となり事業全体を統括。2007年7月には創業者である父・辻本憲三(現、代表取締役会長最高経営責任者(CEO))から社長職を引き継ぎ、代表取締役社長 最高執行責任者(COO)に就任し、現在に至る

『モンスターハンタークロス』の大ヒットで締めくくった2015年

――まず、カプコンにとって2015年はどんな1年だったか教えてください。

辻本春弘社長(以下、辻本): 2015年の最大のトピックと言えば、11月28日に発売した『モンスターハンタークロス』です。これまで数字のナンバーを付けた作品を販売してきましたが、今回は「クロス」という新たな展開をスタートさせました。「モンスターハンター」シリーズは2004年3月の発売から12年がたち、新たなユーザーを開拓する必要に迫られています。そうしたこともあって、ゲーム内容や遊び方をリニューアルし、あえてナンバーを付けなかったのです。

 期中における販売目標は250万本で、『モンスターハンター4』や『モンスターハンター4G』よりも控えめに設定していました。もちろん「東京ゲームショウ 2015」や体験会でのユーザーの反応がいいので、ある程度の手応えは感じていましたが、ナンバーの付いたタイトルに比べると、やはりユーザーは購買に二の足を踏むかもしれないと思っていたからです。

 ところがふたを開けたところ、発売1カ月足らずで300万本、2015年内に320万本を出荷し、『モンスターハンター4G』を上回るほど好調な出足となりました。2016年に入ってからもランキングの上位にいますから、ユーザーからの高い支持を実感しています。

――10年を超えるロングセラータイトルとなった今、ユーザーも様変わりするだろうということで、「モンスターハンター」シリーズに新たな客層を取り込みたいとのことですが、結果はいかがでしたか。

辻本: 『モンスターハンタークロス』の購買データをチェックしたところ、小学校高学年から中学・高校・大学生と、若いユーザー層がボリュームゾーンとして浮かび上がってきました。初期から楽しんでいただいている方々は、今ではほとんどが社会人になっているでしょう。その点、多くの若い方々を取り込めたということは、「モンスターハンター」ブランドの“活性化”につながったわけですから、『モンスターハンタークロス』は非常に意味のあるビジネスだったと評価しています。

 「モンハン現象」と呼ばれるブームを生み出したのは、学校の帰りや喫茶店のような所で仲間と集まって遊んでいただいていたユーザーの方々です。彼らのような「モンスターハンター」に対する支持の高かったユーザー層が、『モンスターハンター4』や『モンスターハンター4G』では、若干少なくなっていました。

 シリーズ作品は年数がたてばユーザー層の年齢が上がるのも仕方のないことかもしれません。しかし、カプコンはシリーズ作品を“ブランド”と認識し、大切にしている会社です。それを維持していくには、シリーズを開発した当初設定した対象年齢の方々の購買意欲を、現在においても再び喚起するようなブランディングを行うことが重要です。これは「モンスターハンター」に限らず、他のシリーズ作品についても同じことが言えます。

『モンスターハンタークロス』
『モンスターハンタークロス』
(C) CAPCOM CO., LTD. 2015 ALL RIGHTS RESERVED.

ロングセラーは、本来のターゲットに再度フォーカスを当て直す

――『モンスターハンタークロス』に、若い層を取り込むための具体策は何かあったのでしょうか。

辻本: ゲームシステムに手を加えたほか、武器や防具についてもリニューアルしました。それらが受け入れられたのではないでしょうか。今回のヒットは、そうした若い新規ユーザー層の獲得が大きかったですし、女性ユーザーの比率も上がりましたね。

 ただ、若い層を取り込む手法については、タイトルごとに細かく分析していく必要があります。カプコンは10年以上続いているタイトルを多く抱えていますが、どれも発売当時と比べ、ファンの年齢層が上昇しています。これまで楽しんでいただいた既存のユーザー層を大切にしながら、さらに新しいユーザーに入ってもらえるようなゲーム内容にしていかなければ、ブランドの維持だけでなく支持するユーザーの母数自体が減っていきます。

――セールスを考えれば、人気シリーズになるほど既存ユーザーを大事にしたいでしょうし、だからと言って挑戦を恐れて新規ユーザーの開拓を怠ればブランドが廃れていく。どちらに軸足を置くか悩ましいところですね。

辻本: これは開発における永遠の課題ですね。しかし、そこを突き詰めることは、開発にとっても目から鱗(うろこ)となるのではないでしょうか。

 確かに、シリーズを追いかけて購入してもらっているお客さんが大切だというのが実情です。しかしデータを取ると、ロングセラーシリーズはコアだったユーザー層の年齢も上がっていることがはっきりしています。彼らを意識しすぎると、開発やマーケティングのポイントが、当初想定していた年齢層やユーザー層とズレてしまう恐れが出てくる。ならば、本来のターゲットに再度フォーカスを当て直して取るべきユーザーを獲得する。それによって、これまでのユーザー層とうまく融合させることができれば、新たなボリュームゾーンができるはずです。

 ユーザーの年齢層が多重化すれば話題も拡散しやすくなりますし、カプコンが得意としている「ワンコンテンツ・マルチユース」のビジネスも展開しやすくなります。2015年はそうしたことを考えながら戦略を立ててきました。ファッション分野でも自動車業界でも、既存のお客さんを大切にしつつ、新しい客層を取り込むためにデザイナーを変えたりして、絶えずリニューアルをかけながらブランドやシリーズを維持していますよね。ゲーム会社におけるブランド戦略も同じだと思います。

 私の肌感覚ですが、リアルイベントの「モンスターハンターフェスタ」には、実に幅広い層の方々に来場していただいたと感じています。ティーンエイジャーから比較的年齢の高い方、仲間同士、女性同士、カップルや家族など……。こうした状況を見ると、『モンスターハンタークロス』の発売によってまた新たなユーザー層への浸透が図れたのではないかと思います。

モンスターハンターフェスタ’16(大阪大会)の様子<br>写真:カプコン提供
モンスターハンターフェスタ’16(大阪大会)の様子
写真:カプコン提供

『ストリートファイターV』では中東のキャラクターを追加

――『モンスターハンタークロス』以外のタイトルについてはいかがでしょうか。

辻本: 2015年に発売した主なタイトルとしては『戦国BASARA4 皇(スメラギ)』や『大逆転裁判 -成歩堂龍ノ介の冒險-』(以下『大逆転裁判』)があります。またさらに前年度になりますが、2015年2月には『バイオハザード リベレーションズ2』のデジタル配信を始めました。特に『大逆転裁判』はナンバリングとは違う新たなシリーズ化を目指していますし、『バイオハザード リベレーションズ2』では章ごとに時期をずらしてネットで販売する「エピソディック配信」という手法にチャレンジしました。このように主要なシリーズタイトルをリリースした上で、新しいことにも着手した1年だったと言えます。

 これらのタイトルについても、シリーズ作品ですから販売本数についてはしっかり考えないといけないのですが、原点回帰というか、発売当初に狙っていた若いユーザー層をしっかり取り込みつつ、既存ユーザーも融合できるような工夫や努力をしていかなくてはなりません。

『戦国BASARA4 皇』
『戦国BASARA4 皇』
(C) CAPCOM CO., LTD. 2015 ALL RIGHTS RESERVED.
『大逆転裁判 -成歩堂龍ノ介の冒險-』
『大逆転裁判 -成歩堂龍ノ介の冒險-』
(C) CAPCOM CO., LTD. 2015 ALL RIGHTS RESERVED.
『バイオハザード リベレーションズ2』
『バイオハザード リベレーションズ2』
(C) CAPCOM CO., LTD. 2015 ALL RIGHTS RESERVED.

――2016年に入って、最初の注目タイトルは2月18日に発売した『ストリートファイターV』だと思いますが、こちらもカプコンを代表する非常に息の長いタイトルですね。

辻本: 『ストリートファイターV』でも、昔からの世界観は大事にしつつ、各キャラクターを今の時代に合うようにデザインし直すなど、しっかりリニューアルを施しました。

 その中でもトピックといえるのは、今回新たに「ラシード (RASHID)」という中東のキャラクターを追加したことです。世界中にハードが広まった今、ネット環境に恵まれている国であれば、配信でさまざまなゲームを購入できます。特にPS4、Xbox Oneになってから中東でのハードの売れ行きが好調な上、ネット環境も整っているのでマーケットとしての魅力が高まっています。今や中東は欧州の主要国に匹敵するくらいの市場規模ですから。そうしたこともあって、『ストリートファイターV』では中東のキャラクターを加え、アラビア語にも対応しました。

 さらに「ストリートファイター」シリーズは前作から「e-Sports」にも非常に力を入れており、『ストリートファイターV』でもe-Sportsにマッチしたゲーム内企画を積極的に売り込んでいます。やはりそれぞれの国や地域を代表するようなキャラクターを入れ込まないと、各国で盛り上がりませんからね。キャラクターもグローバル化です。

『ストリートファイターV』
『ストリートファイターV』
(C)CAPCOM U.S.A., INC. 2016 ALL RIGHTS RESERVED.

――ここ数年、辻本社長はゲームコンテンツのインターネット配信による流通の変革を強調されてきましたが、2015年はその流れが加速した印象を受けます。『ストリートファイターV』が中東マーケットまで視野に入れて攻めていけるようになったのも、インターネット配信の進展によるところが大きいのではありませんか。

辻本: 確かにインターネット配信は加速しましたね。2015年上期におけるカプコンの営業利益率を見ても分かると思いますが、在庫や返品の問題、流通マージンの問題など、すべての面で前年よりも好転しています。しかし、進展する速度はあくまでユーザー次第ですので、ある日突然ブレークスルーしてダウンロード数が跳ね上がる、ということもあり得ます。

『モンスターハンター エクスプロア』が350万ダウンロードのヒット

――それ以外に、2015年で新たにトライされたことはありますか。

辻本: オンラインゲームで、PS4、PS3、PC向けに『ドラゴンズドグマ オンライン』を8月31日から新たに投入しました。基本プレイ無料(アイテム課金制)のフリー・トゥ・プレイなので試行錯誤を続けていますが、カプコンにとっては大きな試みと言えます。

『ドラゴンズドグマ オンライン』
『ドラゴンズドグマ オンライン』
(C) CAPCOM., LTD. 2015 ALL RIGHTS RESERVED.

 もう1つが、ほぼ同時期にリリースしたスマートフォン向けアプリの『モンスターハンター エクスプロア』です。こちらは早々に350万ダウンロードを達成したのですが、カプコンがやる以上は、いかに家庭用の「モンスターハンター」と連動していくか、両方のユーザーを融合させるかが問われます。その意味では、『ドラゴンズドグマ オンライン』同様、こちらも試行錯誤の状態にあります。

――『モンスターハンター エクスプロア』の手応えはいかがですか。

辻本:  350万ダウンロードを突破したとはいえ、まだまだこれからだと思います。ただ、当社の場合は「モンスターハンターフェスタ」のようなイベントの場で『モンスターハンター エクスプロア』を体験していただくことが可能です。

 また、その会場ではアミューズメントカードゲーム機の『モンスターハンター スピリッツ』や、2016年に発売する「モンスターハンター」初のRPG(ロールプレイングゲーム)である『モンスターハンター ストーリーズ』も展開するなど、『モンスターハンタークロス』のユーザーに他の「モンスターハンター」ブランドのゲームを遊んでもらえるように働きかけています。こうした施策を通じて、ユーザーのすそ野の拡大を図っていければと考えています。

 それ以外には、中国のテンセント社との協業で進めているPC用のオンラインゲーム『モンスターハンターオンライン』があります。こちらは2015年12月17日に正式サービスをスタートしたばかりですが、好調に推移しています。テンセント社も「モンスターハンター」への思い入れが強く、足かけ4~5年というかなりの時間とコストをかけて開発してきましたから、長く遊んでもらえるよう力を入れて展開してもらっています。

『モンスターハンター エクスプロア』
『モンスターハンター エクスプロア』
(C) CAPCOM 2015
『モンスターハンターオンライン』
『モンスターハンターオンライン』
(C) 1998 - 2016 TENCENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.
(C) CAPCOM CO., LTD.2007.2016 ALL RIGHTS RESERVED.

モバイル事業を分析できるだけの母数が集まった

――カプコンの課題という点で、モバイル作品でのヒットがないということを挙げられていましたが、今回の『モンスターハンター エクスプロア』で、一定の成果を得られたということになりませんか。

辻本: 確かに『モンスターハンター エクスプロア』は350万ダウンロードに達しましたから、カプコンにとってモバイル分野での久々のヒットといえるかもしれません。カードゲーム型のゲームアプリと異なり、モンスターハンターのアクション感を損なわずに遊べるゲーム内容になっているのが受け入れられたのでしょう。

 次の課題は、ユーザーに満足していただくことが前提の上で、課金への対応や他の「モンスターハンター」シリーズ作品への誘導です。そもそも家庭用ゲームの「モンスターハンター」は追加コンテンツへの課金がありませんからね。あまりに射幸心をあおりすぎては問題ですし、「モンスターハンター」自体のゲーム内容に影響を及ぼす恐れも出てきます。

 また、アプリについても、それ単体で利益を追求するのではなく、カプコンが掲げる「ワンコンテンツ・マルチユース」や「マルチプラットフォーム」といった戦略の一環として動いています。スマートフォンゲームの中には、非常に多額の利益を上げているアプリもありますが、今まで「モンスターハンター」ブランドのゲームを遊んだことのない人に訴求できる“環境”が与えられたと考えれば、マネタイズの重要性は認識しつつも、ブランドの浸透や価値の向上も併せて検討していかなくてはなりません。

 まだまだ課題は多いのですが、モバイルについてはリリース本数にこだわらず、むしろ厳選して開発を進めています。既存のメジャータイトルのブランドを生かしたアプリを作るだけでなく、モバイル発の作品も企画しています。カプコンは各プラットフォームで新たなIP(知的財産)を生み出してきたので、できればモバイル分野でも独自のものを生み出せたらいいですね。

――2015年は、苦戦していたモバイル分野でも突破口が見えたわけですね。

辻本: 突破口が見えたというよりも、モバイル事業を分析できるだけの母数が集まったというところですね。そういう意味では、『モンスターハンター エクスプロア』が良いきっかけになりました。あとはユーザーの納得感が高い課金方法を検討し、将来の利益にどうつなげていくかが2016年以降のテーマだと思います。

『ストリートファイターV』が14カ国語に対応した理由

――その2016年の方向性について教えていただけませんか。

辻本: 以前から申し上げているのですが、現在、カプコンだけでなくゲーム業界全体でインターネットによる大きなイノベーションが始まっています。2016年はそれに対応する、重要な年になるだろうと考えています。例えば、先ほどの『ストリートファイターV』はグローバルブランドですから、インターネット配信を活用していかに成功させるかがポイントとなります。パッケージでも販売しているのですが、ネット配信との売り上げの構成比率は注意して見ていかなくてはならないでしょう。

 それを見越して、『ストリートファイターV』はいまだかつてないほどの言語に対応しています。日本語を含め、14カ国語対応ですからね。スペイン語などは、「欧州スペイン語」と「南米スペイン語」の2種類に対応しているほどです。

 『ストリートファイターV』は今年売り切って終わりではなく、『ストリートファイターIV』が『スーパーストリートファイターIV』や『ウルトラストリートファイターIV』と進化していったように、随時アップデートを繰り返していきます。さらにe-Sportsと連動するなど、長期間、継続して販売していくことになります。インターネットが普及してどこでもゲームが手に入るようになった現在、新興国のゲーム市場がある日突然、有望なマーケットに化けることは十分あり得ます。だとしたら、それから言語対応を進めていてはとても間に合わない。だから先手を打って、多くの言語に対応させているのです。今、「売れる」「売れない」という話ではありません。これもゲーム業界におけるインターネット革命の一つといえるでしょう。

――他のタイトルについても、そうした対応を取られるのでしょうか。

辻本: インターネット時代におけるグローバル展開という意味では、『ストリートファイターV』は試金石であり、その結果を見ながら「バイオハザード」のようなグローバルブランドは対策を練ればいいと思います。カプコンのタイトルは過去作品でも海外でよく売れます。2016年1月21日に『バイオハザード0 HDリマスター』を発売しましたが、実際、海外での売れ行きが好調ですからね。こちらについても、アップデートでの対応になると思いますが、多言語対応については進めていく予定です。

 これまでグローバル展開については、労力がかかり大変でした。それが新しいハードが売れ、ネットにつながっていけば、海外に売り場がなくても売り上げが拡大していく可能性が出てきました。たとえ日本のドメスティックな企業であっても、良質なゲームを作っていけば、売れる環境が整ったわけです。海外の大手ゲームメーカーとのパワーゲームという点では、確かに国内メーカーはまだ不利といえるでしょう。ただ、以前に比べれば戦えるようになってきたと思います。

『バイオハザード0 HDリマスター』
『バイオハザード0 HDリマスター』
"(C) CAPCOM CO., LTD. 2002, 2016 ALL RIGHTS RESERVED."

インターネット配信の効果が「数字」となって現れてきた

――どこか自信のようなものを感じますが……。

辻本: 将来の方向性が、「数字の変化」としてはっきり現れてきていますからね。これまでは「インターネットでゲームを買う人が増えていくと思いますよ」という予想や予言だったのが、その方向で間違いないという「確信」に変わっています。そうなると、社内の雰囲気も変わります。いくら社長が「インターネットで変革が起きる」と言っても、数字がついてこないと疑心暗鬼になるでしょう。実際に労力をかけるのは現場ですしね。

 インターネット配信の効果で、アジアでの売り上げも以前に比べて向上しています。昔はアジア市場では海賊版やコピー問題があったので、ハードは売れてもソフトはそれほど売れませんでした。それがPS3以降はブルーレイディスクになってコピーが出回らなくなり、さらにインターネット環境の整備やPS4の普及によって配信でいろいろなゲームが買えるようになった。その結果、ソフトも売れるようになってきました。

 新作については発表前なので言えませんが、総じて2016年は次の時代に備える1年になるでしょう。

――最後に恒例ではありますが、コンピュータエンターテインメント協会(CESA)のイベント委員長として、「東京ゲームショウ 2016(TGS2016)」に対する抱負をお聞かせください。

辻本: ゲームデバイスで見れば、今年も「VR」ですね。「PlayStation VR」が10月発売に決まりましたので、大きな注目を集めるでしょう。

 それとは別に、開催4日間、幕張メッセを全館使用するイベントとしては、26万~27万人というのが最大収容人数でしょう。そこで次に我々がやらなければならないのは、会場に来なくても各国や地域、ご家庭でも東京ゲームショウを満喫してもらえるような工夫です。

 例えば、今年はさまざまな情報を動画で配信する計画です。特にグローバル展開において、4日間でどのような国で、どのような人たちに見てもらえるかがポイントであり、挑戦すべきテーマだと思っています。これが成功すれば、恐らく世界各国のゲームショウの中でも、東京ゲームショウのステータスが一つ上がるのではないかと思います。

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