スマートグラスで視覚を補う

 ディープラーニングによる画像認識処理で、もう一つ、非常に印象的な事例を紹介しよう。それはMicrosoftの「Seeing AI」プロジェクトだ。こちらで動画を視聴できる。

Microsoftの「Seeing AI」プロジェクトの動画は、YouTubeで閲覧できる。眼鏡内蔵のカメラがとらえた画像を言語化する。ここでもディープラーニングが活用されている
[画像のクリックで拡大表示]

 視覚障害者の男性が、アイウエアブランド「Pivothead」のスマートグラス(眼鏡にカメラを内蔵したもの)をかけて街を歩く。横断歩道を渡ったときに物音に気付く。スマートグラスをタップして写真を撮ると、「スケートボードで男性がジャンプしています」と音声が流れる。なるほど、あの音はスケートボードだったか、と状況がわかる。社内の打ち合わせでは「目の前に2人います、40歳ぐらいのヒゲの男性、驚いている様子」「もう一人は20歳ぐらいの女性、楽しそうです」といった具合に、スマートグラスが周囲の状況を認識し、言語化してくれる。

 ディープラーニングを活用したこのデバイスは、新たな視覚として機能するのだ。興味を持ったら、こちらも読んでみるとよいだろう。

自動運転もディープラーニングで

 ディープラーニングの応用領域として、今最も注目されているものは、「先進運転支援システム(ADAS)」または「自動運転」と呼ばれるものだ。人間は、自分の車の周りを確認して、走れる場所とそうでない場所を区別し、前走車、後続車、対向車の動きを気にしながら、もちろん歩行者や自転車にも気を配り、信号や標識にしたがって、走るべき経路を決めていく。車の運転というのは極めて複雑な作業と言える。この作業の一部、あるいは全部をコンピューターに任せるというのは技術的に大きなチャレンジと言えるだろう。

 この分野でもディープラーニングが大きな役割を果たすようになりつつある。車に搭載したカメラやレーダーからの情報を基に、コンピューターが周囲の物体を認識し、状況に応じた適切な運転操作を行うのだ。筆者が勤めているエヌビディア(米NVIDIAの日本法人)は、そのような自動運転車の開発用プラットフォームとして車載コンピュータ「Drive PX 2」を提供しており、既に多くの自動車メーカーがこれを採用している。

 例えば、スウェーデンのVOLVO(ボルボ)は、同社のフラッグシップSUV(スポーツ用多目的車)である「XC90」にDrive PX 2を搭載して、路上走行試験を行っている。

 これだけではない。電気自動車の開発で知られるTesla Motorsの最新車両には、Drive PX 2をベースとした車載コンピュータが搭載されている。AudiもNVIDIAとの提携を発表し、今年1月のCES(Consumer Electronics Show)2017では、Audi Q7にDrive PX 2を搭載した自動運転デモカーを披露した。

 エヌビディアはDrive PX 2というハードウエアだけでなく、その上で自動運転機能を実現するためのソフトウエアまで含めた統合的な自動運転プラットフォームを開発している。その実証実験として自らも自動運転車を試作。CES 2017では「BB8」の試乗デモを行った。その模様は、こちらから動画で見ることができる。

 2015年10月、安倍総理が 「2020年の東京には、自動運転車がきっと走り回っています」と述べた。自動運転の実現に向けた研究開発は着実に進んでいる。誰もが、安全に移動できる未来は、実はもうすぐそこまで来ているのだ。

エヌビディアは「Drive PX 2」という車載コンピューターを提供し、自動運転技術を日々進化させている
[画像のクリックで拡大表示]