「新機能」「業界初」という言葉は案外くせもの

 プレゼンだけでなく、製品の企画・設計も同じことです。デジタルカメラで、高解像度のイメージセンサーを搭載したはいいけれど、コスト上の制約でディスプレーの解像度が低い製品がかつてありました。撮った写真をデジカメのディスプレーで確認したら粗く見えてしまう。がっかりですよね。それでは、実際には高画質の写真が撮れているのだとしても、ユーザーはキレイな写真が撮れたという満足感をその場で得られません。「新機能」「新構造」「業界初」「業界最高」、メーカーの大好きな言葉ですが、自己満足に陥りやすくさせるという意味では案外、くせものなんですよ。

 周辺機器を、立派な本体に似つかわしくない汎用品で済ませてしまうのも、問題点は同じです。買う人の立場で商品を見られていない。だから、以前の回で話したように、最先端の高価な有機ELテレビのリモコンを他機種と同じ汎用品にしてしまったりするんです。ユーザーとしては、せっかくかっこいいテレビをリビングに置いたのに、手元にあるリモコンが残念なデザインと質感では興ざめですよ。部品や周辺機器の共通化は、コストを考えれば決して間違ってはいませんが、それはメーカーの事情。ユーザーの満足に大きく関わってくる部分に持ち込んではいけないと思います。

 アップルのジョニー(最高デザイン責任者のジョナサン・アイブ氏)は「われわれの目的は差異化ではなく、これから先も人に愛される製品を生み出すことだ」と語って、差異化自体を目的にしてしまう風潮を嘆いていました。アップルに限らず多くの会社が、○○18か条とか○○の10則など、開発の精神・思想を明文化したものを持っています。それなのに、気が付くとそこからそれていってしまうのが悲しいですね。こういうものは唱えるためにあるのではなく、これに則ってものを創ることが本当に大切なんです。

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愛や情熱はマーケティングの上でも絶対に必要

 ただ、ソニーやアップルは少なくとも、自社製品を愛している(社員が多いように見える)し、そこは素晴らしいことです。メーカーによっては、社員が「自社製品に特に欲しいものはない」と言ってしまう会社もあります。そんな会社の製品を欲しいと思うユーザーはいませんよね。

 自動車メーカーのマツダの方にお目にかかる機会がありました。自分たちが作ったクルマのことを、それは熱く語ってくれます。こういうプレゼンができたら、聞く人は感動するし、その製品を好きにもなるでしょう。社員が自社製品を愛しているということは、その人自身にも社内にもユーザーにも、良い効果をもたらします。やっぱり、情熱や愛情は大切です。

 ただし、上述の通り、そこに客観性が欠けてはいけません。ユーザーにとって、その商品・サービスはどう素晴らしいのか、生活の中にどんな素敵なシーンを生みだすのか、そういった視点で製品を見る。客観的に見たうえで「この製品が“This is the best.”」と胸を張れることが、自社製品への愛を強いものにするし、プレゼンや製品自体の説得力になっていくはずです。