決められない自分を変えるのは小さな肯定の積み重ね

 かくいう僕も、昔から自分でいろんなことを決めたわけではありません。僕は、幼少期はやんちゃだったけど、思春期に恥ずかしがり屋の赤面症になって、大学入学当初は、特に女子とはまともに口もきけませんでした。あんまり信じてもらえないけど、いまだに女性には苦手意識があるし、知らない人とたくさん会うレセプションも得意ではないです。話してみたい人がいても自分から声をかけられないし、誰かが紹介してくれて会話ができても、つまらないことしか言えなかったりします。

前刀禎明氏。肯定されることの積み重ねが、苦手意識克服のカギだったと話す
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 それでもこうやって取材を受けたり人前で話したりできるようになったのは、些細なことがきっかけなんです。大学時代、ちょっとした発表をしたときに「前刀の話し方って説得力があるよね」「プレゼン、上手いよね」なんて褒められたのが、うれしかったんですよね。その後も、友達の結婚式の司会や、ソニー時代の英語レッスン中のスピーチ、米国で開催されたベンチャーキャピタルのイベントと、機会があってまた褒められる。そうすると、自分は人前で話して何かを伝える力が、人よりあるのかもしれないと思えるようになります。振り返ってみると僕は、肯定されることの積み重ねで「自分」が持てるようになった気がします。

あえて上下逆さまに見えるかのように撮った1枚。当たり前と思うことも、立ち止まって考えてみよう。「何も考えずに受け入れると思考停止になる。どうしてそうなっているのかを、いつも考える習慣を身につけると思考力がつく」(前刀氏)
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たまには雲に似たソフトクリームをパチリ。「ちょっとしたことにも楽しさを感じ、純粋に喜ぶことができれば、感性が豊かになる。日々の生活が楽しくなる」(前刀氏)
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 僕がインスタでメッセージを発信し続けているのは、おどおどしていた頃の自分や、今同じように自信がない若い人に、何か伝えたい思いがあるんですよね。僕は子どもの頃から、空や雲を見て、別の何かに見えるなって想像してみるのが好きだったから、僕の投稿をきっかけに、みんなも空を見上げて、そこで想像を膨らませたり思索にふけったりしてほしいんです。

 内容は基本的には同じことを、言い方を変えてくり返し投げかけています。自分で考えて、自分で選べる人になろうということを何度も何度も。当たり前のことなんだけど、誰かに言ってもらいたいことってあるし、分かっていても自分の考えだけじゃ自信を持ちにくい人もいるから、そういう人を後押ししたくて。そうして、一人ひとりが「こうでなきゃいけない」という思いから解放されて、自分の考えで物事を決められるようになる、そんなセルフイノベーションを起こすきっかけになったら本望です。

 実は、インスタのあの投稿群には、仮称ですけど名前をつけているんですよ。「SkyGift」、空の贈り物。また「意識高い系」って言われそうですが(笑)、僕は気に入っています。皆さんも空を見上げてつぶやいてみませんか。

(構成/赤坂麻実)

前刀 禎明(さきとう よしあき)
前刀 禎明(さきとう よしあき) ソニー、ベイン・アンド・カンパニー、ウォルト・ディズニー、AOLなどを経て、2004年、アップル米国本社マーケティング担当バイス・プレジデント(副社長)兼 日本法人代表取締役に就任。日本独自のマーケティング手法でiPod miniを大ヒットに導き、スティーブ・ジョブズ氏に託された日本市場でアップルを復活させた。米国本社で行われるジョブズ氏主催のエグゼクティブ・ミーティングに参加した唯一の日本人でもある。2007年、リアルディアを設立。創造的知性を磨くセルフ・イノベーション実践プログラムや五感ワークショップの提供、感性アプリの開発を手がけている。著書に『僕は、だれの真似もしない』(アスコム)などがある。
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