メーカーは経営も営業も意識を変えると道が開ける

 UIのシンプルさでいえば、イケアのユーザーマニュアルなどは参考になると思います。家具を組み立てる手順にしろ、注意点にしろ、全てイラストで表現して、テキストは思い切って排除。世界中どんな言語を使う人にも分かるようになっています。

 イケアは、未購入の製品(家具など)を自分の部屋に置いた様子を3D画像で確認できるAR(拡張現実感)カタログアプリを提供したり、スマート照明を各社のAI(人工知能)に対応させると発表したり、先進的な取り組みが目立ちます。店舗もまるでテーマパークのようで、商品の前に「体験を売る」つくりになっています。今後、IoT製品などの新しい市場で覇権を握るのは、電機メーカーではなく、イケアのようにユーザーと距離が近い小売の企業かもしれないと感じます。

イケアがスマートフォンやタブレット向けに配信している「IKEAカタログ」アプリでは、ARを使い、家具を自室に置いたときのイメージを疑似的に確認できる。画像では、背景は実際のオフィス、イスはARで合成したもの
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 ここで一度語っておきたいのですが、家電は小売や営業のあり方も見直すべきときに来ていると思います。家電量販店では、所狭しと商品を並べて、「売れ筋ランキング1位」のような表示ばかりが強調された光景をよく目にします。「体験を売る」からは程遠い状況です。

 もっとも、これは買う側の未熟さが招いたことかもしれません。お客さんが誰も彼も「よく売れているのはどれですか」とたずねてくる状況では、店側もランキングを最初から掲示しておいたほうが手間がないと考えて当然です。買う側はランキングを見て右へならうのではなく、自分で考えてこれぞという製品を選べるように、売る側は創意工夫のある陳列ができるようになるといいですね。

 メーカーの営業部門も、考え方を変えることで成功に近づいていけると思います。例えば、製品が思うように売れないとき、売れ行きがよくないのを機能不足のせいにするのは問題です。「他社製品にはこの機能がついているのに、うちの製品にはついていないから売れないんだ」という理屈。こう言わざるをえない事情がいろいろあるのは察せられますが、この主張はあまり益がない。それよりもカスタマーエデュケーションに力を注ぐのが建設的な仕事だと思います。

 エデュケーションというと、上から目線な言い方に聞こえるかもしれませんが、要は新しい価値をユーザーにきちんと伝えてほしいのです。新しい製品が生まれたら、その良さをユーザーにわかってもらうのが営業の務め。製品部門に、機能をてんこ盛りにするようなフィードバックをするのは実りの多い仕事とは思えません。

 経営陣にも我慢が必要です。一般に、新しいものが浸透するにはそれなりの時間がかかります。発売当初の売れ行きが良くないとき、今は浸透していくプロセスだと信じられずに、「この事業・製品は失敗」「市場に受け入れられなかった」と早々に結論づけてしまうのは、自分たちに信念がない証拠です。

 自分たちが本当に良いと信じるもの、ユーザーにとってもきっと良いはずだと思えるものを作って売る。市場の理解がなかなか追いつかなくても、しばらくは我慢して売り続ける。機能も性能も横並びの製品が増えた今の時代、これができる会社がきっと勝ちます。そういう意味では、これからのメーカーは発想や技術だけでなく、企業姿勢も問われる時代になっていくのでしょうね。