販売戦略上、世界同時発売が重要になっている

――年頭所感では、2016年は可能性が見えた年だったと振り返りました。

松田洋祐氏(以下、松田氏): 家庭用ゲーム機の分野では、2016年11月に『ファイナルファンタジーXV(FFXV)』が発売になったことが大きいですね。一方、スマートフォン向けゲームは、2016年前半は苦戦しました。しかし、あまり悲観的にならず、新しいタイトルをどれだけ出せるか、という挑戦を継続的に行わなければならないと思っています。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などのゲームに対しても、『ポケモンGO』のような新しい技術と有力IPを組み合わせた遊び方が出てきていることに触発されています。

 『FFXV』は世界で600万本(2017年1月10日時点、パッケージ出荷数とダウンロード販売数の合計)の販売を記録しました。600万本という数字を、どのくらいの速度で達成できるかが1つの重要なポイントだと考えていました。今回、発売1カ月強というこれまでのFFで一番短い期間で600万本を達成できたのは、世界同時発売の成果だと考えています。特に北米での販売が順調で、継続的に売れています。

――世界のゲームマーケットの動きはいかがですか?

松田氏: 今回の『FFXV』は家庭用ゲーム機向けに販売しているので、各地域ともプラットフォーム(「PlayStation 4」「Xbox One」)の普及台数に合わせた動きになっています。パッケージ販売とダウンロード販売という切り分け方をしてみると、北米市場では2割超がダウンロード販売でした。これは他の地域より高い割合ですね。この2年ぐらいでダウンロード販売の比率が高まっていて、欧米市場では半分くらいになっているタイトルもあるそうです。

 もともと欧米市場は長期にわたって売れ続ける傾向が強いのですが、ゲームタイトルのアップデートや追加ダウンロード・コンテンツ販売などの施策を増やすことで、ゲームタイトル自体のライフ・タイム・バリューの最大化に取り組む計画です。

 プロモーションやマーケティングなどのやり方も変わってきていて、事前にどれくらい口コミが広がるか、話題に上るかが重要ですね。YouTubeなどの動画サイトでの広がり方には注目していて、視聴数や再生回数などの数字を一つの指標として注目しています。

 マーケティングの側面からも世界同時発売は重要です。ゲームユーザーの皆さんは最新のゲームをいち早く遊びたいとお考えでしょうから、地域によって時間差を設けることは望ましくありません。例えば、あるタイトルを日本で先行販売すると、海外のユーザーさんが途端に興味をなくすことが間々あるんですよね。「もう発売済みで、ずいぶん前に出した古いタイトルでしょ」というレッテルを貼って興味を失ってしまうんです。地域によって発売時期の差を作らないことは大事なのです。特にストーリーを重視するようなRPGやアクションアドベンチャーなどは、世界で同時に発売しないと売れ行きは厳しいですよね。

 また、ユーザーさんが自分のゲームプレーを動画でシェアし、それによってバズが起きて、そのゲームタイトルがさらに注目されるという循環も発生します。その話題性が、ゲームを販売する上で重要になってきています。

―― 一方で、各地域の特性を合わせた“カルチャライズ”も必要ではありませんか。

松田氏: いや、そんなことはないですね。中途半端にゲームの内容を変更するカルチャライズをするくらいなら、純日本産のタイトルとして振り切って作った方が評価されます。自分たちのオリジナリティーを大事にしないとダメだと思います。

『ファイナルファンタジーXV』
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