ビジネスで初対面の相手を前に、名刺が切れていることに気付き、冷や汗をかいた経験は誰しもあるのではないだろうか。同じ轍は踏まないと、財布に入れっ放しにしておいた数枚の予備名刺も、折れたり汚れたりして、役に立たないことが多い。そんな緊急事態を救ってくれるのが、ステンレス鋼板製の極薄の名刺入れ「KEEP SMART」だ。財布や鞄などにしのばせておけば、ピンチを切り抜けられる。“刃物の町”として知られる岐阜県関市で金属プレス加工業を営み、この製品の生みの親となったツカダの塚田浩生社長に開発の裏側を聞いた。

名刺を3枚まで挟み込め、名刺と名刺の間に0.1mmの仕切り鋼板を挟むことで、圧着によるインク移りを防げる極薄名刺入れ「KEEP SMART」
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―― 「KEEP SMART」は名刺切れの緊急事態を救う、ありそうでなかったお助けグッズですね。

ツカダの塚田浩生社長(以下、塚田): 厚さ僅か0.2mmのステンレス鋼板を2つ折りにしたシンプルな構造の名刺入れです。大きさは一般的な名刺とほぼ同じサイズで、3枚の名刺を鋼板の間に挟み込んで使います。名刺と名刺の間に、厚さ0.1mmの付属の金属製仕切り板を差し込むことで、インク移りを防ぐ配慮もなされています。名刺と仕切り板を含めた全体の厚さはクレジットカード2枚分以下なので、財布に入れても邪魔になりません。名刺が折れたり、汚れたりすることから着実にガードし、名刺切れの大ポカをカバーできる緊急用予備名刺入れとして重宝するグッズです。

本体は名刺2枚分しかない極薄設計
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財布のポケットや札入れに収納できる。実際に名刺と仕切り鋼板を挟み込んでもクレジットカード2枚分以下の厚さでかさばらないのがメリット
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―― 非常にニッチな商品ですが、そもそもなぜ開発しようと思い立ったのですか?

塚田:  私自身が何度か名刺切れを起こしてしまい、挨拶のときに相手に渡せなかった経験があるからです。そんな事態に備えようと財布に何枚か名刺を入れておくのですが、いざ使おうと思って取り出すと、折れたり、汚れたりしている。それでも渡さないよりはマシと、よれよれになった名刺を手で必死に伸ばして差し出したこともありますが、恥ずかしい思いでいっぱいでした。 そんなことを繰り返していたある日のこと。いつものように予備の名刺を財布に補充しようとしたとき、待てよ、わが社の金属加工技術を使って数枚挟み込める極薄の名刺入れを作れば、折れや汚れを防げるのではないかと、とっさにひらめいたのです。私の周りにも名刺切れで気まずい思いをした経験を持つ人が何人もいたことから、世の中にもきっとニーズがあると思いました。

―― 確かに需要はありそうですね。今までこうした商品がなかったことが不思議なくらいです。

塚田:  私も既に商品化されているだろうと思って、インターネットですぐに調べてみました。すると、スマホケースのポケットなどに入れられる極薄名刺入れは、やはりいくつか販売されていた。しかし、意外なことに材質は紙や革ばかりで、金属製のものは見当たらなかったのです。念のため、岐阜市の特許事務所で調べてもらうと、私が考えたコンセプトと同様の製品が、75年に特許申請されていましたが、プラスチック製で厚さも0.5~1mmとそれほど薄くないことが判明。金属製の予備名刺入れという私のアイデアは、極薄にできて、さらに素材に新規性があるため、特許も取得できると言われました。そこで、今年4月に特許申請し、早速開発に取り掛かったのです。