LED電球といえば、価格は高いものの節電ができて、長寿命であることが利点。ただし、デザインが画一的で「ダサい」と不評を買うこともあり、雰囲気作りを大切にするカフェやレストラン、ホテル、インテリアショップでは、未だに昔ながらの裸電球を使う店も少なくない。そうした事情に目を付け、LEDのおしゃれな裸電球「サイフォン」を開発し、世に送り出したのが社員40人の中小メーカー「ビートソニック」(愛知県)だ。大手メーカーが作るLED電球への不満を一気に解消し、2800~6500円と高額ながら売り上げ5万個超のヒットとなった。サイフォン誕生の経緯や人気の背景、クラウドファンディングで支援を受けた理由など、開発を担当した戸谷大地氏に聞いた。

スタイリッシュなLED電球「サイフォン」シリーズ
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―― ビートソニックは元々カーオーディオの独立系メーカーですよね。それが、なぜLED電球を?

戸谷大地氏(以下、戸谷): ひと昔前までカーオーディオはとても大きなマーケットで、当社は車種別やメーカー別など大手が作らないようなニッチな製品を開発し、従業員約40人の小さな会社を成り立たせてきました。しかし、2008年のリーマンショックで潮目が変わりました。カーオーディオ市場が頭打ちになり、閉塞感が漂い始めたのです。当時、私は主に新規事業担当として4年間働いたITベンチャーを辞め、父が経営するこのビートソニックに合流したのですが、このままカーオーディオなどの車載機器に全力投球し続けるのは危ういと感じました。

 そこで、当社のものづくりの技術を活かしつつ、別の分野にも参入しようと模索し、目を付けたのがLED電球だったのです。LED電球は大手メーカーがほぼ独占しているものの、まだプレイヤーが少ない市場だったこと。秋葉原で売っているような部品を組み合わせれば、良い悪いは別にして物自体はできてしまうほど参入の敷居が低いこと。海外の展示会でLED製品を目にする機会が多々あり、その可能性を感じていたことなどが理由です。

サイフォン開発者のビートソニック・戸谷大地氏
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―― その後、どのように開発を進めましたか?

戸谷: 実は、今回ヒットしたサイフォンの前にも、いくつか他のLED電球を開発しています。最初は2010年に電球内にオイルを充填し、そのオイルの対流によって熱効率を向上させる「アクア球」という製品を台湾の企業と共同開発。しかし、これが全く売れませんでした。次に、2011年に従来のLED電球より照らした物の影がくっきりと壁に映る「影美人」という製品を、飲食店やホテル向けの間接照明用に売り出しましたが、これも当初は鳴かず飛ばず。当社は営業部隊を持たないうえ、世間では無名の存在であり、商流を作れないことが原因でした。

 しかし、影美人に関しては、SNSによる拡散やSEO対策で集客を図る地道なPR作戦をした結果、徐々に売れるようになり、本格的にLED事業を立ち上げる機運が社内でも高まってきました。そんなとき、喫茶店やインテリアショップで、照明によるおしゃれな雰囲気作りに裸の白熱電球を使っているのを、しばしば目にしました。けれど、白熱電球はよく切れるため、3カ月に1度程度は取り換える必要があり、エネルギー効率が悪いため光熱費もかかります。使用中のガラスの表面は非常に熱くなって危ないこともデメリット。そうしたこともあって、雰囲気を出すためのLEDの裸電球は作れないのかとふと思ったのが、サイフォンを生むアイデアのきっかけになったのです。

独自開発の拡散体を搭載し、白熱電球よりもくっきりとした影が出るというLED電球「影美人」(ビートソニック)
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