子供から大人まで、男女を問わず、万人の耳穴にフィットする完全ワイヤレスイヤホンが登場した。神奈川県鎌倉市を拠点とするスタートアップ「ヴィースタイル」が開発する画期的な新製品「VIE FIT」だ。秘密は、耳穴に入れる外装部が特殊なシリコーン製で非常に柔らかく、十人十色の耳穴の形に合わせて、自在に形状や向きを変えられること。その音楽への没入感たるや、高性能のヘッドホンに勝るとも劣らない。クラウドファンディングのMakuakeで開始したプロジェクトの支援額は2000万円を超え、ユーザーの期待の大きさも立証済みだ。世界でも類を見ない“没入イヤホン”を生み出した経緯を、ヴィースタイルCEOの今村泰彦氏に聞いた。

万人の耳穴に完全にフィットする無線イヤホンの「VIE FIT」
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耳の外側に見える本体サイズも小さめで見た目がスマートだ
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鼓膜のスイートスポットに音楽が届く

――完全ワイヤレスイヤホンは、16年末にアップルが発売した「Air Pods」が大ヒットし、その後も多くのメーカーが参入している競争が激しい市場です。後発のVIE FITが既存製品と決定的に異なる点は何ですか?

 ヴィースタイルCEOの今村泰彦氏(以下、今村氏):最大の違いは、耳穴に入れるイヤホンの外装部が特殊なシリコーンで作られており、非常に柔らかいことです。これによって、各ユーザーの耳穴の形に合わせ、自在に形状や向きを変えられ、隙間なく完全にフィットさせられます。完全にフィットすると、良いことが2つあります。1つは遮音性が高くなること。ちょうど耳栓をした状態と同じくらい外音を遮断し、逆にイヤホンから出力される音楽の周囲への音漏れも防ぐことができます。

 もう1つは、耳穴が痛くならないことです。実は耳穴の形は、個々のユーザーによって千差万別。小さい人もいれば、大きい人もいて、穴の曲がり方も全く異なります。それなのに既存のイヤホンの外装部は、基本的には形状や向きが変わらない設計。そのため、いくら最大公約数で理想の形にデザインしても、人によっては耳穴のどこかが当たって圧迫され、長い時間装着していると痛くなってしまうのが難点でした。

 その点、当社のVIE FITは耳穴の形状に応じて外装部の形が自在に変わるので、どこかに当たることも圧迫することもない。言ってみれば、形が“不変”なものを最大公約数で作ってもフィットしない人がいるなら、いっそのこと変幻自在に“可変”できるようにして、誰の耳にもフィットするようにしてしまえばいい、という逆転の発想で開発したのがVIE FITです。

――実際の音楽の聴こえ方はどうですか?

今村氏:  ひと言で言えば、イヤホンではほとんどの人が味わったことがない、驚きの音楽体験が可能になります。秘訣は、超小型スピーカーを外装部の先端に取り付ける構造にしたことです。既存の完全ワイヤレスイヤホンでは、スピーカーは耳穴の外に出ている本体に搭載し、耳穴に入れる外装部は単なる空洞の筒であることが多いのですが、この構造だと良い音を聞くことは難しい。スピーカーから出た音はまっすぐにしか飛ばないのに、その先の耳穴が曲がっているため、音がダイレクトに鼓膜に届かないからです。よって、スピーカーを鼓膜の近くまで押し込み、鼓膜の“スイートスポット”に向けて直接音楽を鳴らすのが、良い音を聴くための条件になります。

VIE FITは、可変の外装部の先にスピーカーがあるため、耳穴の奥の奥まで入り込み、まさに鼓膜近くでダイレクトに音楽を流すことができます。実際に装着して聴いてみてください。従来のイヤホンとは全く違うことが実感できると思います。

――(筆者が耳に装着してみると……)まず、遮音性が抜群ですね。単に外装部を押し込んだだけで、外部の音がほぼ聞こえない。それに、音楽を再生すると、イヤホンなのにまるで高性能のヘッドホンで聴いているような臨場感。これは音楽の世界に没入できますね。

今村氏:  ありがとうございます。VIE FITのスピーカーは、ネオジウムという高価な磁石を使い、直径が8mmとイヤホンでは比較的大きなサイズ。高音も低音もバランスよく、全ての周波数帯で良い音が出る設計になっています。ただし、こうしたスペックももちろん重要ですが、イヤホンで最も大切なことは、実はスピーカーの位置です。ちゃんと遮音して、ベストなポジションで聴くことができるなら、ある程度のスペックがあれば、どんなスピーカーでも基本的に良い音になります。イヤホンのスピーカーは、「位置が7割」なのです。

 加えて、外音がほとんど聞こえないことも、臨場感を高めるための大きな利点。他社製で“電子的”に外音のノイキャン(ノイズキャンセル)ができる完全ワイヤレスイヤホンもありますが、バッテリーの消費が大きくなってしまいます。対して、VIE FITは耳穴を完全に近い状態で塞いで“物理的”にノイキャンしている。極めてアナログな方法ですが、最も安価で最も効果的なアプローチで、バッテリーを余分に食ったりもしないわけです。

外装部の先端にスピーカーが搭載されたユニークな構造。外装部は自在に向きを変えられるため、スピーカーを360度回転させることも可能だ
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シリコーン製で柔らかく自在に曲がるため、耳穴の形に合わせて形状を変えることができ、確実にフィットする
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外装部は耳の奥の奥まで押し込むことができるため、鼓膜にダイレクトに音を届けることが可能。既存のイヤホンにはない臨場感のある音楽体験ができる
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