この記事は雑誌『日経おとなのOFF』2012年12月号に掲載した記事に一部手を加えたものです。内容は基本的に雑誌掲載当時のものです。

 九州鉄道の起点として門司港駅が開業したのは、明治24(1891)年。利用客の増加に対応するため、1914年、左右対称のネオ・ルネサンス様式の装いで現駅舎が造られた。駅前広場に立つと、堂々とした風格と存在感に圧倒される。

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市民の熱意が救ったJR門司港駅
構内にも戦前から使用されている青銅製の手水鉢などが残り、ディテールに味わいがある。2018年3月まで駅舎の保存修理工事中。この間も営業するが、来春からは鉄骨とパネルで駅舎を覆って作業するため、外観が見られなくなる。駅舎を見るなら、来年2月末までに訪れたい。

 大正時代の息吹を伝える貴重な駅舎だが、昭和末には取り壊しの危機にあった。救ったのは市民の熱意だ。「集まった義援金で銅板屋根を葺ふき替えたところ、鉄道駅舎として初めて国の重要文化財に指定されました。多くの人に愛されているからこそ残せた建築遺産です」。保存活動に関わった内山昌子さんは力強く話す。100年の歴史を持つ木造駅舎は訪れる人を温かく包み込むように立っていた。

 門司港の開港は1889年。その頃から鉄道や工場の動力源である石炭需要は急速に高まっていった。日本で産出される石炭の半分を占めていた筑豊炭田を背後に抱える門司港は、炭鉱景気に沸いた。

ノスタルジックな構内
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九州鉄道の起点を示すゼロマイル記念碑。現在のようにkm表示を始めたのは昭和初期から
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