専門家が「2016年のデジタル製品トレンド」を予測する、日経トレンディネットの1月特集。モバイルからAV製品までデジタル業界全般に精通するITジャーナリストの西田宗千佳氏は、今年2016年のデジタル業界をどう見ているのか?

西田宗千佳氏の予測は……
【1】パソコン・タブレットの「縦横比」が大きく変わる
【2】パソコンはペン対応が当たり前に
【3】「酔わないバーチャルリアリティー」が普及

 2016年を、私は「ディスプレーの変化が本格化する年」だと思っている。それはいわゆる4Kテレビの話ではない。4Kは既にあたりまえのもので、既存の路線の延長線上にある。もっと別の、パーソナルに使っているディスプレーに変化が現れる年だと考えているのだ。

 特に、2つの領域でそれは明確になっていく。ひとつは「プロダクティビティー(仕事効率化)」であり、もうひとつが「バーチャルリアリティー」だ。

【予測1】パソコン・タブレットが「紙」に近づく

ITジャーナリストの西田宗千佳氏
[画像のクリックで拡大表示]

 我々は普段、さまざまなものを「作る」のにパソコンを使っている。高い演算力があり、ソフトが豊富で、ネットワークが使え、キーボードとマウスという広く普及したインターフェースという、すべての要件を満たす機器はパソコンくらいしかない。

 一方で、あまりに一般化した結果、使い方も固定化し、買い替えもなかなか進まない機器になっている。パソコンに強いこだわりがある人を除くと、壊れるなどの「どうしても買い替えなくてはいけない」ときになるまで使い続け、選ぶときにも価格を重視して選ぶものになっている。そのあたりが、昨今伝えられるパソコンメーカーの苦境の原因だ。

 では、パソコン、特にノートパソコンが完成された製品かというと、そうとは言えない。どこでも持ち運んで使えるのは便利だが、そこで必要な要素は本当に満たされているだろうか?

 筆者が特に不満を覚えるのはディスプレーだ。多くのパソコンは、縦横比16:10もしくは16:9のパネルを使っている。ノートパソコンのデザインを考えると横長が自然……と思いがちだが、本当にこの画面、使いやすいだろうか? 筆者は「横書き文書の多い現状では、表示領域は狭くなりすぎている」と感じる。

 昨今は電子書籍を画面で読むことも増えたが、16:10や16:9では、見開き表示にしたときの余白が多くなりすぎて、画面が有効活用できない。本体を変形させてタブレットにできる、いわゆる2-in-1製品の場合、本体を縦に持って使うこともあるが、このときには、妙に縦長になってやはり使いづらい。これは、ほとんどのタブレットにもいえることだ。

 16:9、もしくは16:10のディスプレーが多く使われるようになったのは、ディスプレーパネル生産の都合である部分が大きい。パネルメーカーがそうしたパネルを多く作るようになったので、別の比率のものを調達しづらくなったのである。テレビの場合、視界をうまくカバーして没入感を高める目的から、16:9のパネルを使うのは理にかなっている。

 しかし、パソコンやタブレットにおいてはどうだろう? そろそろ、適材適所で選ぶべき時だ。16:9の紙はほとんど使われていない。テレビやスマートフォンは16:9がいいが、パソコン・タブレットは「紙」に近い、4:3もしくは3:2を軸にすべき時が来ている。この紙に近い画面サイズを実践しているのが、マイクロソフトのSurfaceシリーズ(3:2)であり、アップルのiPad Pro(4:3)だ。

[画像のクリックで拡大表示]
[画像のクリックで拡大表示]
Surface Pro 4やiPad Proは、紙に近い画面サイズの製品だ