この連載は、女心のわからないモリシロウ(某電気機器メーカーエンジニア)が、若い女の子たちから絶大な支持を受けるプリントシール機の企画に携わる稲垣涼子(フリューGIRLS'TREND 研究所所長)と、シンデレラテクノロジーを研究する久保友香(東京大学大学院情報理工学系研究科特任研究員)の元を訪ね、女の子たちの「盛る」という行動を糸口に、デジタル時代の女の子たちの価値尺度を学んでいく連載です。
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リアル“盛り”とバーチャル“盛り”

モリ: 前回、『SNOW』というスマートフォンアプリを教えてもらいました。その後、会社の女の子のSNSを見ていると、みんな使っているようでした。それにしても、プリントシール機(プリ)や加工アプリなど、ネットの上でばかりどんどんとかわいくなって、現実は置いてけぼりでいいのですかね?

m 久保: 女の子は決して、ネットの上だけでかわいくなろうとしているわけではないですよ。

稲垣: そうです。プリや加工アプリで盛るのが好きな子は、基本的に、お化粧で盛ることも好きな子です。

モリ: 画像加工も、お化粧も、両方がんばるのですね。

稲垣: プリや加工アプリでは盛るのに、お化粧では盛りません、という女の子はほとんどいません。いるとすれば、何かどうしてもお化粧ができない理由のある場合だと思います。

久保: 学校やご両親から、お化粧が禁止されている学生とかね。

モリ: プリや加工アプリで盛ることと、お化粧で盛ることとは、どのような関係にあるのですか?

稲垣: 両方とも、かわいくなるためのプロセスの一部です。

久保: プリや加工アプリなどバーチャルにかわいくなれる技術が発展するほど、リアルでもそこに追いつこうとする女の子たちの思いが盛り上がっているように見えます。

稲垣: プリを使ったり、自撮りをすることの多い子ほど、かわいい子が多いというのはあると思います。

久保: 実際に私が最初にフリューの社員の方々と会ったとき、かわいい方ばかりで驚いて、理由を聞いたら、そういうことでした。

稲垣: 入社して日がたつほど、あか抜けてかわいくなっていく人が多い印象は確かにあります。それはプリをたくさん利用することで自分がかわいくなった姿を見る機会が増え、お化粧などの自分磨きを日常的に意識するようになるからではないかと考えています。

久保: プリというのは、努力を促す道具なのだと思います。女の子たちは、かわいくなる努力をしたいと思っていて、努力を促してくれる道具を求めていると思います。

稲垣: 自分のプリを見るのは、雑誌でかわいいモデルさんを見ることとは違います。自分という素材のかわいくなった姿だから、努力の道筋が立てやすいのです。

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久保: 女の子たちの目的は、あくまでもリアルにかわいくなることであり、バーチャルはそのシミュレーションとして使われているのではないでしょうか。

稲垣: 実際にはシミュレーションというほど高度な使い方をしている子は、一部かと。

モリ: というと?

稲垣: 単純に、印刷した紙やモニターの上で自分の顔を見るという経験は、鏡で見る経験とは全く違うものです。例えば「私は横から写されると太く見えるのか」などと気づいて、「ではどうにかしないと」と努力する循環が生まれます。

久保: なるほど。鏡で見ている時にはない、客観性が出てくるわけですね。

稲垣: そして、さらに他人にも見られることが増えるので、そこからのフィードバックも入ってくると、もっと努力するようになります。芸能人の方々が、どんどんかわいくなっていくように。

久保: なるほど。プリというのはステージなのですね。観客がいれば、本当のステージですし、観客がいなくても、自分という観客がプリというステージに立っている自分を見ているということだと思います。

モリ: 結局、プリや加工アプリでバーチャルに盛るのも、最終的な目的はリアルにかわいくなることなのですね。

稲垣: その場合が多いと思います。お化粧で盛るのも、プリや加工アプリで盛るのも、両方とも重要な、かわいくなるためのプロセスですね。

久保: 女の子たちの意識の中では、大人が思うほど、リアルとバーチャルの区別がなさそうですね。

モリ: デジタルネイティブは違いますね。

久保: 女の子たちは、「今日は学校があってメイクしていない」からプリでは大きな目のコースを選んだり、「今日はがっつりメイクした」からプリではナチュラルなコースを選んだりといったことをするそうです。リアルとバーチャルがシームレスにつながっているのだなと感じます。

稲垣: だからトレンドも同じように変化します。かつてギャル全盛の時期は、お化粧で顕著に盛っていたし、当時はまだアプリはありませんでしたが、プリでもしっかりと盛っていました。今は、お化粧がナチュラル傾向なので、プリや加工アプリでもナチュラル傾向です。

■久保友香氏の登壇が決定!

日経BP社が主催するTREND EXPO TOKYO 2016で、久保友香氏がシンデレラ・テクノロジーについて講演することが決定しました。デジタル時代の女性の価値基準を知りたい方はぜひ聴講してください。

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