家電ティーチャーの奈津子です。前回は愛知ドビーが2016年12月1日に発売した「バーミキュラ ライスポット」の特徴や魅力などについて紹介しました。今回はライスポット開発にまつわるお話の続きと、工場見学の模様をお届けしたいと思います。

「こちらが愛知ドビーの鋳造部門です」
「こちらが愛知ドビーの鋳造部門です」
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「無水調理」は難しくないけど、世界で戦うために進化

 前回紹介したように、ライスポットで炊いたご飯はとてもおいしかったのですが、それにもましてローストビーフや「無水ポトフ」などの料理のおいしさに感動しました。最初は「炊飯器」というイメージだったのですが、炊飯だけではもったいない……そう思わせるのに十分な味でした。

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「ご飯も無水ポトフも、ローストビーフも、チャーハンもおいしかったです!」

 バーミキュラというブランドは、私自身「聞いたことがある」という程度で詳しく知らなかったのですが(海外のブランドかと思っていました)、水を使わずに調理する「無水調理」が得意な鋳物ホーロー鍋として2010年の発売以来ずっと人気が続いているそうです。無水調理というと、シャープが2015年11月に発売した「ヘルシオ ホットクック」などもそうですよね。

 水を使わずに、野菜などからしみ出る水分と調味料の水分だけで調理するのが無水調理の特徴ですが、調理は難しくないの……?って思いますよね。前回ご登場いただいた愛知ドビー副社長の土方智晴氏は、「全然難しくないですよ」と語っていました。

左が土方邦裕社長、中央が土方智晴副社長
左が土方邦裕社長、中央が土方智晴副社長
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 「無水調理は『弱火』が大事なのですが、その弱火がどのくらいなのかは、お湯を1回沸かして蒸気の出具合を見てもらえれば分かります。それは以前からずっと言い続けてきました。1回覚えればいつもそこに合わせるだけなので、全然難しくないんですよ」(土方智晴副社長)

 水を鍋に入れて沸騰させたときに、蒸気がフタから真横に噴き出るときは中火、ゆらゆらと上に上るときが弱火なんだとか。そのときのガスレンジのつまみやIHクッキングヒーターのインジケーターの位置を覚えておけば、誰でも失敗せずに無水調理ができるそうです。

 では、なぜ簡単に調理できるバーミキュラを“家電”にする必要があったのでしょうか。その背景には、バーミキュラを海外に展開する世界戦略があったそうです。

 「ライスポットを開発するときに、『世界戦略機種』として開発しようと考えていました。アジアではなく、どちらかというと欧米です。バーミキュラは無水調理が得意な鍋で、野菜をおいしくするために開発しました。それを持って、以前サンフランシスコやパリでマーケット調査をしたんです。向こうは『ル・クルーゼ』や『ストウブ』などの鋳物ホーロー鍋の本拠地です。その中に乗り込んでいくぞという気持ちで行って、実際に機能の差や味の差を多くの人にすごく感じていただけました。『無水調理をしてこの味はすごい』と、サンフランシスコの一般家庭の方や、パリでは一流のシェフに認めていただいたんです。でも価格が合わないんですよ」(土方智晴副社長)

 ルクルーゼの鋳物ホーロー鍋というと高級製品というイメージがありますが、米国では日本に比べると安いのだとか。バーミキュラは無水調理でいかにおいしい料理を作れるかを追求した結果、鍋とフタを100分の1mmという高い精度で合わせているのですが、そのために価格が高くなってしまいます。「同じ鋳物ホーロー鍋では、2倍の価格差があっては買えないと言われるんです」と土方智晴副社長は語ります。

 「同じ『鋳物ホーロー鍋』というジャンルだから2倍の価格は出せないというのなら、見た目も含めて全く新しいジャンルの製品を作らなければ、欧米では戦えないということを数年前に学んだのです。ではどうすればいいのか。バーミキュラは火加減が重要で、素材本来の味を引き出すために化学調味料を入れるのはタブーです。食材にほんの少しの調味料を加えて、いかに味をまとめるかというのが美学としてあるのですが、それをやるためには“役者”が少ないですよね。『鍋』と『食材』と『調味料』しかないので、味を引き出すために、『火加減』がすごく重要になるのです」(土方智晴副社長)

 先ほどのお話にも「火加減」というキーワードがありました。慣れてしまえば決して難しくないとのことでしたが……。