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ソントンの機能性表示食品の紹介サイト

 1991年にトクホ(特定機能性食品)、2015年には機能性表示食品の制度が生まれ、飲料やヨーグルトなど、多くの食品ジャンルで機能性をうたった商品が登場したが、2017年はさらに種類が広がっている。例えば、ソントンが3月に発売した「ピーナッツクリーム」「黒ごまクリーム」「はちみつスプレッド」は、「おなかの調子を整える」とパッケージにうたわれたジャム・スプレッドカテゴリー初の機能性表示食品だ。またイオンはトップバリューシリーズで「おなかの調子を整えたい方の」と袋にうたっているパン初の機能性表示食品3種を発売、エースコックもGABAを配合した、機能性表示食品初のカップ麺「かるしお認定 だしの旨みで減塩 鶏炊きうどん」を売り出した。さらに吉野家が7月から店頭販売を始めたのが、牛丼「サラ牛」。これは食後の血糖値の上昇を穏やかにするサラシア成分を配合したメニューだ。さて、機能性食品はどこまで拡大していくのだろうか。マーケティングに携わるインテグレートCEOの藤田康人氏に機能性食品の今後について話を聞いた。

機能性表示食品は売れていないは本当!?

――機能性表示食品が増えているのはなぜでしょうか?

インテグレートCEOの藤田康人氏。1997年キシリトールを日本に初めて導入し、キシリトールブームを仕掛ける。2007年マーケティングエージェンシー、インテグレートを設立。著書に『カスタマーセントリック思考』など多数
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藤田: 2015年に機能性食品制度ができました。その背景には、今の医療財源では病気の予防を進めていかないと財政的に厳しくなっていく一方なので、消費者に食事で健康を維持してもらおうという大きな流れがありました。高齢化で健康はさらに大きなテーマになってきています。

――国も病気を予防するために機能性表示食品に期待しているということですね。

藤田: 機能性表示食品の数が増えているのには、導入のしやすさもあります。食品で機能性を謳うのに、トクホに比べると、時間的にもコスト的にもハードルが低くなりました。また、欧米から来ているスーパーフード人気も追い風になっています。アサイーやチアシード、スーパー大麦など、食材自体に健康にプラスになるものが入ってきています。

――機能性食品制度についての認知も広がってきましたね。

藤田: 確かにジャンルとしての認知は広がりました。しかし、問題は、売れているものは一部で、多くの機能性表示食品はあまり売れていないということです。それはなぜかというと、機能性を打ち出しても消費者がそこに新しい価値を見出さなければ買ってはもらえないからです。例えば、難消化デキストリン(水溶性食物繊維)入りの商品が数多く出てきていますが、同じ成分や効能の商品はトクホにもあり、血糖値の抑制や脂肪吸収といった機能性だけでは、消費者にとっては何の新しさもありません。

――しかし、売れている商品もあります。

藤田: 売れてる商品は、テレビCMなどを含めた大きなプロモーションを仕掛けています。ファンケルの「えんきん」や雪印メグミルクのヨーグルト「恵 megumiガゼリ菌SP株ヨーグルト」などがそうです。機能性表示食品のメリットは、実はパッケージに機能性が表示できるようになったことよりも、広告やプロモーションの中で、うたえるようになったことにあります。多くの食品メーカーはパッケージに機能性を表示すれば、消費者が見つけてくれると思っていますが、いかにその機能性を知らせるかの戦略が必要なのです。

――ただ売り場にあるだけでは、消費者には届かないわけでね。

藤田: もう一つ、機能性表示食品の製品数が増えた背景には安易な製品開発があります。自社の技術が生かせる、オリジナリティーのある商品性を打ち出せるからではなく、新しくできた機能性表示食品の制度ができたからこれを利用して何か製品を出さなければというプロジェクトも多く見られました。

――安易に売り出したから、すぐに撤退するところも出てきていますね。

藤田: 継続して販売店の棚を押さえられなかったり、機能性を表示したばかりに商品性が狭くなって売れなかったり、いろいろな理由があります。たくさん出ているので機能性食品市場が大きくなったように思われているのです。

――消費者庁への届け出ベースでは、1000件に届きそうな勢いです。

藤田: 届け出はあっても市場に残っているのは3~4割程度と我々は見ています。これが機能性表示食品の第一世代の厳しい状況なのです。

機能性表示食品は第二世代が市場を切り開く

トクホと機能性表示食品の違い
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藤田: しかし、これから消費者にとって魅力的な健康素材、新しい商品コンセプトを持った第2世代の機能性表示製品が出てくると思っています。実際、ひざ関節や目などの体の部分に向け、トクホで言えなかった食品の機能性をうたったものなどは、ヒットしていますからね。

――藤田さんは、第二世代では、どのジャンルの機能性食品に期待していますか。

藤田: やはり引き続き、腸に働く食品は注目です。腸は人間の臓器の中で第二の脳と言われているように、とても重要で複雑な臓器です。整腸や、免疫力のアップや肥満抑制などのほか、様々な機能性を持たせることが考えられます。もう一つは脳でしょう。認知症対策や子供の発育への影響など、ブレインヘルスは今後重要になってきます。ただし、オリジナリティーのある機能性についてはなかなか取得するためのハードルは高いのも事実です。国が納得するエビデンスを得て、オリジナリティーのある製品を出していくには、工夫とチャレンジ精神が大切になってきます。

過度に煽らない期待値コントロールが重要

――トクホを含めた機能性食品の効果を疑問視する報道もありました。効能は実証されているのか、本当に効くのかという実感が持てないところに機能性食品の難しさがあるような気がします。

藤田: 機能性食品は薬ではないので、実感、体感というのは得にくいですし、その効果を実証するのも難しいところがあります。そもそも薬のような劇的な健康効果を期待するものではないのです。ただ、消費者が健康にプラスになる食品を買う時に頼りにするのがエビデンスで、これを提示するのは重要なことだと思っています。

――しかし、機能性食品と言うと、効果を期待してしまいますね。

藤田: トクホや機能性表示食品でエビデンスなど効果をあおりすぎるきらいがあります。体感がないと落胆も大きくなります。過度に期待をさせると離反者も増えていきます。そこで状況に合わせた期待値コントロールも考えないといけません。機能性表示食品は体調に変化がない、今の健康を維持できていることこそが効果であると消費者に納得してもらうこと。そして継続して食べてもらいその効果を実感してもらうことが大切です。

ヒット商品を作る食品の機能性マーケティング

食品の機能性マーケティング戦略構築のフレーム
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――いよいよヒットさせるためには、マーケティングも重要になってきますね。

藤田: まず、継続して食べてもらうために、味や栄養、機能性といった食品としての製品設計も重要になってきます。機能性表示食品がサプリメントではなく、食の分野で増えているのは、食の技術の向上が理由の一つであると考えられます。これまでは食品に機能性を足そうとするとどうしても味に癖が出てしまい、おいしいものができなかった。ところが、森永製菓のハイカカオのチョコレートのように程よい苦味が売り物のヒット商品も生まれています。

 さらに少しでもその健康効果を実感、体感できるようなストーリーやコンテンツも必要になります。どこどこで長いこと食べられていた食材の有効成分であるとか、教育や医療の現場で使われているといったエピソードは重要。実際、僕が携わったキシリトールでは、妊婦さんが妊娠すると虫歯菌の母子伝搬の予防のために保健所の指導で使われたりしています。

 また、森永乳業のビフィズス菌M-16Vは新生児が未熟児で生まれた時に処方されたりします。製品に入っている成分や素材、開発の背景、信頼できる人の使用実態など、いろんな角度からその商品の健康効果に納得できる、あるいは腑に落ちるような物語づくりが大事になってきます。これに裏付けとなるデータ、エビデンスをうまく絡めて消費者の心をつかむ、そんな戦略的なマーケティングを仕掛けていきます。これはメディアにとっても社会的意義があり、ニュースにもなるので広げていこうというモチベーションや理由になります。

――実際に使われているというのがすごく大事なんですね。

藤田: 第二世代はストーリーやコンテンツを提供しながら、さらに企業というよりも第三者である研究者からエビデンスが出てくるといいですね。グラフだけではない、大学が研究している、臨床で実際に使われているという事実があれば、消費者は納得しやすいでしょう。

――海外の機能性食品の事例なども活用できないのでしょうか。

藤田: 米国では、脂肪ゼロ、グルテンゼロ、トランス脂肪酸ゼロなど、体に悪いものが入っていないことをうたっているくらいで、一般的な食品に機能性成分を添加するという商品はあまり見られません。何かをカットしているということについては、事実なので消費者に訴求しやすいんですね。日本には、昔から医食同源の思想があり、食事で健康になろうという考え方があります。スーパーマーケットの棚に機能性表示のある飲料や乳製品がずらりと並んでいたり、吉野家がサラ牛を発売するなど、ファストフードが機能性食品をメニューに組み入れたりしているのは日本独特の光景。日本が最先端の領域にチャレンジしている分野です。第二世代の機能性食品がブレイクすることを期待したいですね。

(構成/石井和也=日経BP総研マーケティング戦略研究所)

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