今回の対談相手はTSUTAYA 三軒茶屋店の栗俣力也氏。黒地に赤文字という人目をひく手書きPOPで次々とヒット書籍を生み出し、版元から帯の制作を依頼されたこともあるカリスマ書店員のニックネームは「仕掛け番長」。仕掛けた本を次々と当てる一方で、ここ数年はイベントの企画や運営など書店員という枠を超えた活動も行っている。「時代に合ったイベントを企画すれば必ず人は集まる」と話す栗俣氏に仕掛けの極意を聞いた。

TSUTAYA 三軒茶屋店 栗俣力也氏(右)。1983年、東京・浅草生まれ。2004年に東京デザイン専門学校卒業後、セガに入社。2007年から「TSUTAYA BOOK STORE 有楽町マルイ」にアルバイトとして勤務。2013年に社員となり、2014年夏に三軒茶屋店に配属され、現在も同店にて勤務
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本ではなく「客ありき」で仕掛ける

高橋晋平氏(以下、高橋): 栗俣さんにお会いするのは初めてですが、ツイッターは拝見しています。「仕掛け番長」というニックネームはいつ生まれたんでしょうか。

栗俣力也氏(以下、栗俣): 有楽町(TSUTAYA BOOK STORE有楽町マルイ)で働き始めて半年ほどたったころに、出版社の担当者に付けられたニックネームなんですよ。当時、徳間書店から出ていた『激流』(柴田よしき著・上下巻)という文庫をプッシュして、1カ月で500セット売りました。その後、店舗にやって来た徳間書店の担当者から突然、「おはよう、仕掛け番長!」と声をかけられて(笑)。それが周囲に広がっていった感じです。

高橋: 書店員になったのはいつなんですか?

栗俣: ちょうど有楽町店がオープンした年だから、2007年です。前職はゲーム会社にいましたが、その当時、離婚して1歳くらいの子どもの面倒を見なければならなかったので、夕方に帰れる仕事がしたいと思ってTSUTAYAに転職しました。もともと本は好きでしたが、実は入社時は何を担当するかは決まっていなかったんです。有楽町に配属が決まってから、レンタルコーナーがない書店のみの店舗だと知りました。

高橋: 栗俣さんが仕掛けた中で、これが一番大きな実績を上げた、という書籍について教えてもらえますか。

栗俣: いろいろやっていたので記憶はあいまいなんですが、大きな成功といえば『人喰いの時代』(山田正紀著)ですね。これを手がけた2013年当時、大ヒットする小説が少なくなっていて。ただ、昔読んだ『人喰いの時代』なら今の時代にヒットするだろうと感じて、版元の角川春樹事務所に話を持ちかけました。すでに絶版していたものを僕がイメージした通りの表紙にリニューアルして復刊。店舗限定、2000冊で作ろうということになりました。それが売れたので少しずつ取扱店を広げたところ、復刊から3カ月で4万部を突破しました。

山田正紀著『人喰いの時代』(帯は栗俣氏の手書きによるもの)
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高橋: 復刊したいという思いから掘り起こしたということですね。仕掛けるときのコツはありますか。

栗俣: 本ありきではなく「お客様ありき」で考えるようにしています。まず「今の世の中ってどうなの?」「どんなニーズがあるの?」と考えます。そこから逆算して、自分がこれまでに読んだ本の中で時代に合っているものをプッシュします。

高橋: マーケティング的な考え方ですよね。栗俣さんの考え方や手法は、書店員としてやはりトガっているんでしょうか。

栗俣: 同じようなやり方をする人に会ったことはないです。ただ、書店はすごく大きな業界なので、僕が知らないだけかもしれないですが。学生時代にDJをやっていて、「今日のお客さんはどんな曲が聞きたいのか」とフロアを見ながら考えるくせがあったんです。もともと、人に何かを薦めるのが好きなんですよね。