「∞(むげん)プチプチ」などのヒット商品を生み出した高橋晋平氏は「TEDxTokyo」に登壇するなど、企画・アイデア発想の名手としても知られる。その高橋氏が世の中で話題となっている“トンガリ商品”をピックアップし、開発者に直撃。企画の源泉とアイデアの“転がし方”を探っていく。

 ツイッターでお題をつぶやくと、瞬時に面白い答えが返ってくると話題のAI(人工知能)「大喜利β」。その答えのレベルの高さに、落語研究会出身の高橋氏は度肝を抜かれたという。いったいどんな人がどんな目的で作っているのか。大喜利βを開発した「株式会社わたしは」の竹之内大輔社長に話を聞いた。

竹之内大輔氏(写真右)。1981年生まれ、群馬県出身。株式会社わたしは代表取締役。大手コンサルティングファーム勤務後、東京工業大学大学院博士課程で数理社会学・内部観測論を研究(博士後期課程単位取得満期退学)。WEBマーケティング会社勤務を経て、2016年4月に大喜利する人工知能「大喜利β」の開発だけに特化した「株式会社わたしは」を創業。社名は楳図かずお先生の『わたしは真悟』に由来する。
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聖書もネタにしちゃうんだ(笑)

高橋晋平氏(以下、高橋): ツイッターでお題をつぶやくと瞬時に答えを返してくる人工知能(以下、AI)があるという話を聞いて、「AIってそこまで来ているんだ!」とかなり驚きました。早速、試してみたんですが、ガンガン秀逸な答えが返ってきますね。

竹之内大輔(以下、竹之内): ツイッターのバージョンは「大喜利β」というんですが、それよりも新しいモデルを使ったものが手元にあるんです。遊んでみませんか?

高橋: じゃあ、僕らはメガネつながりなんで……「世界最新式のメガネが発売された。どんなメガネ?」。

竹之内: では入力します……。はい、「楽天でもっと安く売ってたら教えてくれる」。

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高橋: (笑)。ツイッター版は一つの答えが返ってきますよね。あれはたくさんの答えの中から無作為に抽出しているんですか。

竹之内: AIが一番面白いと判断したものが表示されます。

高橋: 機械が思考しているってことなんですね。

竹之内: シンプルなのも出てきました。「盗聴」。

高橋: すごいな。瞬時に答えが量産されるんですか。

竹之内: 今やっていただいている「大喜利β最新バージョン」では、入力後2~3秒で50個の答えが送られてきます。その中から私が特に面白いと思った答えを選んでいるんですが……。あ、これもいいですよ。「聖書に挟まっている」。

高橋: (笑)。聖書もネタにしちゃうんだ。いや、さっきの楽天の回答、すごかったですよね。かなり頭のいい答えじゃないですか。買ったあとに教えるっていうのも面白い。次のお題もいいですか。「面白い走り方とは?」。

竹之内: どんな答えが出てくるか……。はい、「桂馬の動き」。

高橋: いいですね! ほかにはどんな回答がありますか。

竹之内: ええと、「北を目指す」。

高橋: 南とか東とかは、出てきていないんですよね。

竹之内: 北だけです。ベタなのもけっこう出てきているんですよ。「網走」とか。でも、僕的にはちょっとイマイチな回答なんですよ。

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高橋: では、「モテるための髪型とは?」

竹之内: 「風に負ける」。あとは……「髪のみぞ知る」。

高橋: (笑)。じゃあ最後に、今、自分の身に起きていることなんですけど。「キレてる奥さんを大人しくする方法」。いい回答あったら、ちょっと実践してみたいなと思って。

竹之内: あー、難しいですね、これ。「傷つけてはダメなので秘密裏に毒殺する」。

高橋: 秘密裏って出てくるところが(笑)。言葉がなんとなく稚拙なのが面白い。

竹之内: 「今なら僕に慰謝料を請求されずに済みます」とか。あ、これは突き放すパターンですね。「現世ではダメ、来世で一緒に幸せになろう」。

高橋: いや、どれ使えるかな……。どれを言っても、キレられそう。しかし、パターンが多彩ですよね。デバイスが答えを返すこと自体が面白いじゃないですか。これは竹之内さん自身の芸として成立していると思うことはあります?

竹之内: そう言っていただけるのはうれしいんですけど、できるだけ早く、自分が顔出しせずに済むようになるといいなと思っているんですよ。最初のプランでは、大喜利βがAIということを伏せたまま、深夜ラジオのいろんなコーナーにネタ投稿しまくり、読まれたら「あれはAIでした」と種明かしする、というプロモーションをするつもりだったんです。ハガキ職人ネームも作って、NHKの「ケータイ大喜利」にも投稿してって考えていたんですけどね。でも大喜利βを実装した直後に、知人が主催している大喜利のイベントに呼ばれて、見事に優勝してしまって。それをきっかけにネットメディアから取材依頼がきて、僕らのプランが崩れ始めた(笑)。今でも取材やテレビの企画をいただくことはあるんですが、基本的にお断りしているんです。

高橋: コンセプトが面白すぎたんでしょうね。AIについてどう思うか、みたいな取材は受けていないんですか。  

竹之内: そういった内容の番組に出演したこともあります。好きな芸人さんがいらっしゃるということで、ミーハー気分もあって出演したんですが……。行ってみたら、番組の方向性が「AIには、まだできないことが多い」という内容だったんですよ。それで、その場で大喜利βを見せたら、演出を変更することになってしまって。それ以来、局側を困らせるだろうなと思って、お断りするようになりました。例外として、大喜利というコンテンツをずっと楽しんできた方や、自分たちでそういうコンテンツを作ってきた方への恩返しという気持ちで、大喜利関連の企画には参加させてもらっています。