今回の対談相手は中川政七商店の吉岡聖貴氏。全国各地の郷土玩具をミニチュアサイズにしたカプセル玩具「日本全国まめ郷土玩具蒐集(しゅうしゅう)」を手がけた吉岡氏と、同じく郷土玩具をモチーフにしたカードゲーム「民芸スタジアム」を2017年に発売した高橋氏が、郷土玩具の魅力について語る。

中川政七商店 ブランドマネジメント室 営業統括執行役員の吉岡聖貴氏(写真左)。大学卒業後、公共空間のデザインやまちづくりのコンサルタントを経て、 2013年に中川政七商店に入社。小売り部門を経験して、2014年に「日本市」ブランドマネージャーに就任。小規模工芸メーカーと土産もの屋を繋ぐ地産地消の仕組みづくりを中心に、地方観光地のプロジェクトに取り組んでいる
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郷土玩具の後継者問題に危機感

高橋晋平氏(以下、高橋): 以前カプセル玩具についていろいろ調べていて、「日本全国まめ郷土玩具蒐集(以下、まめ郷土玩具)」を知りました。でも、その当時、僕は民芸品にまったく興味がなくて。赤べこぐらいしか知りませんでした。でも、その後、あるきっかけで民芸品に注目するようになって、「そういえばまめ郷土玩具ってあったな」と改めて調べたら、これはすごい商品だと気づいたんです。どうして全国の民芸品をカプセル玩具にしようと考えたのでしょうか。

吉岡聖貴氏(以下、吉岡): 正月の飾り物や各歳時記の縁起物というのは、以前から自社商品として扱っていました。でも、特に郷土玩具のような小さな工房は後継者問題に悩んでいる状況で、僕らも危機感を覚えていました。そんななか、ここにもある「祝い鯛(いわいだい)」という静岡の張り子の作り手の方が亡くなってしまったんです。ご夫婦で作っていて、ご主人が亡くなったので奥さんも制作を止めることになり、当社でも取り扱えなくなってしまって……。いよいよ郷土玩具をなんとかしないといけないと思ったとき、フィギュア制作会社の方と知り合って「何かカプセル玩具を作りませんか」という話になったんです。それなら47都道府県の郷土玩具をカプセル玩具にしてみたいと提案したのがきっかけでした。

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高橋: 僕も民芸スタジアムに祝い鯛を入れたいとオファーしたんですよ。そうしたら制作者が亡くなって、今はもう作っていないからという回答が来ました。見た目にインパクトがあるので使いたかったのですが、カードには現物の写真を使うつもりだったので諦めたんですよ。ほかにも、「私の代で終わるかもしれないから、もし作れなくなったときに(カードゲームで写真を見て)欲しいと思う人がいたら申し訳ないので」という理由で断られる例も多かったです。

吉岡: 祝い鯛そのものはもう作られていないんですが、まめ郷土玩具のラインアップにはあえて入れています。郷土玩具は廃絶と復活を繰り返しながら、アレンジされているというものなので、この形の祝い鯛も昔作られていたものと全く同じではないかもしれないし、そのほかの郷土玩具もきっとそうではないかと思います。でも、それこそが郷土玩具の自由さというか、面白いところなのかなと。変わらない風土性のようなものもありつつ、作り手が代わることでアレンジもされる。だから、このまめ郷土玩具の祝い鯛を見て、いつかまた誰かが復活させてくれるといいなという期待を込めて。

カプセル玩具「日本全国まめ郷土玩具蒐集(しゅうしゅう)」の一部。写真中央、2匹の鯛が合体した形状のものが「祝い鯛」
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