全国各地の郷土玩具をミニチュアサイズにしたカプセル玩具「日本全国まめ郷土玩具蒐集(しゅうしゅう)」を手がけた中川政七商店の吉岡聖貴氏との対談後編。郷土玩具やその作り手を守るために、個人やメーカーができることとは?

中川政七商店 ブランドマネジメント室 営業統括執行役員の吉岡聖貴氏(写真左)。大学卒業後、公共空間のデザインやまちづくりのコンサルタントを経て、 2013年に中川政七商店に入社。小売り部門を経験して、2014年に「日本市」ブランドマネージャーに就任。小規模工芸メーカーと土産もの屋を繋ぐ地産地消の仕組みづくりを中心に、地方観光地のプロジェクトに取り組んでいる
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郷土玩具と聞いても「それ何?」という人は多い

高橋晋平氏(以下、高橋): 「民芸スタジアム」を作る前は郷土玩具に全然関心がなかったのですが、共同制作者の乙幡啓子さんが「郷土玩具はマジでいい」と勧めてくれたのでいろいろとチェックして実際に見に行ったんですよ、そうしたら、200年前に作られたものでこのデザインかと思うほど、素晴らしい完成度で。しかも、そういうものが日本各地にあって、さまざまな人が作っている。

吉岡聖貴氏(以下、吉岡): 郷土玩具って基本的に子どもの健康や魔除け、あとは縁起を担ぐために作られていて、それぞれ理由があるんですよね。例えば、赤を使うのは天然痘の予防という願いを込めていたり。「赤べこ」って赤牛のことなんですけど、赤牛って本当は茶色いじゃないですか。でもあえてこんなに真っ赤に塗っているのは、そういう意味があるようです。素材もその土地のものを使っていて、赤べこは会津という城下町で和紙がたくさん作られるので、それで張り子の人形に仕立てている。誕生した当時の時代背景と、そこに込められた祈りがにじみでているというのはどこの郷土玩具にも感じます。

高橋: 民芸スタジアムに入れたいと頼んでも「これは神様の子みたいなものだから、戦わせないでくれ」と断られることも多かったです。

吉岡: 2017年の5~6月に郷土玩具の工房を回ったのですが、そのときに行く先々の作り手さんに「今度、カードゲームが出ます」と教えてもらいましたよ。

高橋: 本当ですか。

カプセル玩具「日本全国まめ郷土玩具蒐集(しゅうしゅう)」の一部。一番右が「赤べこ」
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吉岡: たまたま取材で伺った先に民芸スタジアムがあって、僕らもそこでこのゲームの存在を知ったという感じです。

高橋: ゲームに載せる郷土玩具はイラストではなく写真にしたいと考えていたので、実際に郷土玩具を購入して撮影したんですよ。でも、許可を得るために問い合わせても断られることも多くて、集めるのが大変で……。ただ、電話やメール、ファックスでやりとりしているうちに先方ともだんだんと親しくなってきて、民芸スタジアムのことを自分のブログに載せてくれたり、周りに宣伝してくれたりするようになったんです。完成したときに現物を送りましたが、作り手の方が口々に「全国にこんなに郷土玩具があるんだ」と言っていたのが印象に残りました。自分たちと同じように郷土玩具を作っている人がいて、しかもこんなにおもしろいものがたくさんあると知ってうれしかったと言っていましたね。

吉岡: 郷土玩具と聞いて、「それ何?」という状態が一般的なのかなと思うんですよ。旅先でこういうものを一つひとつ見つけて、「こんなにたくさん種類があるんだ」ということが分かるまではかなり遠い道のり。だから、47都道府県全部のまめ郷土玩具を作って、一堂に集めて紹介することに意味があると考えました。