MRJ開発の舞台は米国内へ

パリ・エアショー展示のためにパリ・ルブルジェ空港に到着したMRJ(画像:三菱航空機)
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 筆者の見るところ、三菱重工/三菱航空機がMRJの開発で苦闘する根本には、日本におけるジェネアビの欠如がかなり影響しているように思う。

 現在、MRJの試作機は米国に渡り、ワシントン州のモーゼスレイク飛行試験センターで飛行試験を行っている。米国内のほうが短期間で試験を実施できる環境だから、という理由からだ。また、米国内で大量のベテラン技術者を雇用する一方、今年5月には国内でMRJ関連の従業員を2割削減すると発表した。

 三菱重工はボーイング社や欧州エアバス社向けに旅客機の機体構造部品を製造して供給している。しかし、部品を作るのと、航空機全体を作るのとは訳が違った。部品製造ならその部品単品の完成度を上げればいいが、航空機全体となると、空気力学から機体構造、搭載する電子機器、開発した機体を試験する方法、航空会社への売り込み方、さらには空港での使い勝手や修理の容易さ、世界中の空港への部品の供給体制など、航空会社へのサービスも含む全体をバランス良く作り上げていかなくてはならない。そのためのノウハウは、飛行機全体を作り上げた経験の中からしか獲得できない。そうした経験とスキルを持った人材が、国内にはほとんどいないのである。

 経験やスキルが少ないという点では、国土交通省の航空局も同様だった。作った飛行機が安全かどうかは航空局が審査する。だが、そもそも誰も飛行機を作らないので、航空局の審査の技量も上がらない。MRJ開発にあたって航空局はかなり頑張って体制を整えたが、それでも三菱重工が望む早さで審査を実施できなかったという。一方、日本と米国は相互に審査に合格した機体を認証することになっており、米国で審査に合格した機体は日本でも飛ぶことができる。それならば、より経験豊富な米国に機体を持っていって、米国で審査を受けたほうが迅速にビジネスを進められるという判断だろう。

 こうした事態を招かざるを得なかったのは、「道具として使う」「乗って楽しむ」から「自分で作る」「作った機体の安全性を審査してお墨付きを与える」「自作の機体を自分で操縦する」といったことが、日本では一般的ではなかったから。つまり、ジェネアビが欠如していたことも一因になっていると思う。