今回紹介するのは、キヤノンが2015年9月に発売した「EF35mm F1.4L II USM」だ。5000万画素超の高画素デジタル一眼が幅広く使われる時代を見据え、フィルム時代に設計された旧製品を置き換えるべく登場した。20万円超の価格に見合う描写性能や使い勝手を持っているか、鹿野カメラマンが実力をチェックした。

 この連載も、新製品(と僕個人…)の状況に左右されて時折更新が滞りつつ、今年で5年目を迎えることになった。5年前、フルサイズのデジタル一眼レフといえば2000万画素前後だったと思うが、今は3000万~5000万画素の機種が居並ぶ。5年前は、まだ各社ともフィルム時代に設計されたレンズを多くラインアップしていたが、ここ数年で高画素のデジタル一眼レフに対応したレンズに置き換わりつつある。今回紹介する「EF35mm F1.4L II USM」も、従来モデルをリプレイスした改良版だ。

キヤノンが2015年9月に発売した「EF35mm F1.4L II USM」。新開発の光学素子「BRレンズ」などを採用し、色収差を徹底的に封じ込めた。希望小売価格は28万5000円で、実売価格は22万円前後
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 従来モデルにあたる「EF35mm F1.4L USM」はフィルム時代の1998年に登場したレンズで、僕も長く愛用していた。ボケにちょっとクセがあったが、繊細な描写をすることでお気に入りの一本だった。味という点では今でも価値はあると思うが、EOS 5D Mark IIIではさすがに甘さが目立ち、出番がなくなって手放してしまった。その前型とはフィルター径こそ72mmと変わらないものの、全長が86mmから105.5mmに伸びるなど、サイズはややアップ。ぱっと見は、広角レンズというよりも中望遠レンズの雰囲気だ。デザインがやけに素っ気ないのが個人的には残念だが、このあたりは好みが分かれるところだろう。

 肝心の光学系は、UDレンズに非球面レンズ、研削非球面レンズ、ガラスモールド非球面レンズと、特殊レンズがてんこ盛り。さらに、新開発の「BRレンズ」の採用で、収差を徹底的に抑えているという。これは「Blue Spectrum Refractive Optics」の略で、2枚のレンズの間にBR光学素子を入れて貼り合わせたもの。他の色と集光位置がずれることで色収差の原因とされてきた青色の光のみを屈折するという。

凸レンズと凹レンズで構成されるBRレンズ(実際はピッタリくっついている)。両レンズの間にBRの光学素子を挟み込んであり、短い波長の青色の光を大きく屈折させることに成功した
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BRの光学素子は有機光学材料を原料としている
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35mmは自然な遠近感で背景を写し込めるので、こうした街角でのスナップにはぴったり。光の少ない場面だったが、その場の空気が伝わるような描写だ(EOS 5Ds使用、ISO100、1/640秒、F1.4)
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絞ればセンサーの能力をフルに引き出し、被写体を緻密に再現する。ズームレンズでここまで解像するのは難しいと思う(EOS 5Ds使用、ISO100、1/50秒、F4)
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クレーンはびしっとシャープに、そして雲はモノトーンの微妙な濃淡を再現してくれた(EOS 5Ds使用、ISO100、1/640秒、F5.6)
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