蚊が増えるこれからの季節、蚊が媒介する病気には十分気を付けなければなりません。今年はブラジルなどで流行中のジカウイルス感染症(ジカ熱)に注目が集まっていますが、実はもっと深刻なのが東南アジアで大流行している日本脳炎です。対策を含め、ナビタスクリニック立川・川崎・新宿の理事長、久住英二先生に解説していただきます。

流行の危険性はジカ熱だけじゃない! 日本脳炎が大問題に

 ブラジルでは蚊を媒介とするジカウイルス感染症(ジカ熱)の流行が続き、アスリートの五輪出場辞退が続出しています。蚊が媒介する病気の流行は夏を迎える北半球ではこれからメーンになり、ジカ熱の日本国内での流行も懸念されています。

 しかし気を付けるべきはジカ熱だけではありません。日本や東南アジアには、日本脳炎という蚊が媒介する感染症があり、昔から問題になっています。日本国内ではワクチン(予防接種)が定期接種(感染症対策上、重要度が高く、行政の費用負担による予防接種のうち、一定の年齢において接種を受けることとされているもの)に含まれているので流行は起きていませんし、心配ないと思うかもしれません。

 ところが実は、免疫が十分ではない人はたくさんいて、100%安心ではないのです。

治療法がない!! 日本脳炎がコワイ理由

 日本脳炎ウイルス(JEV)は、ジカ熱やデング熱と同じフラビウイルス属のウイルスで、おもにイエカ(Culex)という種類の蚊が媒介します。日本では水田で発生するコガタアカイエカが媒介します。

 JEVは蚊の吸血に伴い様々な動物に感染し、そこでウイルスが増え、その動物を吸血した蚊が人の血を吸う際に人の体内に入ります。人の体内では、ウイルスが血中に長期間大量に存在することはないため、蚊を介して人から人へ感染することはありません。また、感染しても症状が出るのは100~1000人に1人とされ、ほとんどの人は無症状で終わります。

 症状が出るのは感染してから5~15日後突然の発熱、頭痛、嘔吐などで発病します。そして次第に項部硬直(首のうなじの筋肉が突っ張る)、光線過敏(光をひどくまぶしく感じる)、意識障害(眠たげになり、眠ってしまい、進行すると呼びかけなど刺激に反応しなくなる)を呈し、手足の麻痺や痙攣(けいれん)が出現します。死亡率は20~30%で、生存者の30~50%には神経学的後遺症(精神病、認知症、高次脳機能障害、麻痺など)が残ります。

 恐ろしい感染症なうえ、特に有効な治療法はなく、点滴など補液や人工呼吸管理などをしながら自然回復を待つしかありません。

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