筆記具は、家電やIT機器のように、あっと驚く新製品が毎年出てきたり、大幅に機能がアップするジャンルではない。例えば鉛筆なんて、1940年代、50年代に発売された製品が、今でも現役で販売されているのだ。あの油性ボールペンの常識を変えた「ジェットストリーム」は発売されてからすでに12年、「フリクションボール」発売からも9年がたっている。多くの筆記具はじっくりと時間をかけて開発され、ゆっくりと世間に浸透していく。愛用されることで製品として定着していく。

 もちろん、新しい製品も登場するが、新製品が過去の製品を常に駆逐するとは限らない。それでも毎年、ハッとさせられる製品が登場するから面白い。

書き味は万年筆以上!? まったく新しいボールペン

筆圧で線の太さを変えられる水性ボールペン「ユニボール エア」200円(11月26日発売)。右上が0.5mm、左下が0.7mmのタイプ
[画像のクリックで拡大表示]

 2015年秋、三菱鉛筆はまったく新しいボールペンを発表した。2016年に創業130周年を迎える同社の新しい挑戦として、ボールペンの新たな表現力を提案するものだ。

 11月26日に発売になる「ユニボール エア」は、何と、ボールペンなのに万年筆のように筆圧によって描線に強弱を付けることができる。その秘密は、ペン先のボール(チップ)を支えるパーツの構造にある。

 このパーツ、樹脂とエラストマーの2種類の素材で作られ、硬い樹脂を軟らかいエストラマーが覆うような形になっていて、筆圧をかけるとエストラマーの部分が縮む。するとチップが沈み込み、チップの外側からもインクが流れ出る。その結果、描線が太くなるという仕組みだそうだ。

色は、黒の他に青と赤がある。軸がストライプ模様なのが0.7mm、無地が0.5mm
[画像のクリックで拡大表示]
図のような仕組みで描線の太さを変えることができる
[画像のクリックで拡大表示]

 ユニボール エアは顔料タイプの水性ボールペンで、0.5mmと0.7mmの2種類のボール径のものが用意されるが、実際の線の太さは、0.5mmタイプが約0.3~0.5mm、0.7mmタイプが約0.4~0.6mmという感じで、筆圧によって書ける太さが変化する。色は、黒、青、赤の3色。キャップ式、200円で発売される。

万年筆のペン先のような模様が特徴的
[画像のクリックで拡大表示]
キャップは半透明でペン先が見えるようになっている
[画像のクリックで拡大表示]

 ボールペンは、ボールの大きさで描線の幅が決まる仕組みで、線の太さを変えずに書けるのが大きな特徴の一つ。それを、チップが沈み込んで、外側からインクが流れ出る構造にすることで筆記幅を自在に変えられるというのは、従来のボールペンを否定するかのような製品だ。

 「攻めています」と広報の神崎由依子氏が言うように、本当に新しいタイプのボールペンなのだ。線の太さをかなりコントロールできるため、写真のようにカリグラフィーっぽいことまで、これ1本でできてしまう。もちろん、「トメ、ハネ、ハライ」も自在だ。

[画像のクリックで拡大表示]
[画像のクリックで拡大表示]
三菱鉛筆広報の神崎由依子さんによる筆記例。こんなふうに筆圧で文字の太さをコントロールできるので、カリグラフィーふうも、トメ、ハネ、ハライも自在に表現できる

 書き味はとにかく軽い。“エア”という商品名の由来はそこにあるのだけれど、もともと、水性ボールペンのスラスラさ加減は、油性ボールペンがいくらサラサラ書けるようになったからといって追いつけるものではない。その上で、このエアはインクがかなり潤沢に出るので、ほとんど筆圧を掛けなくてもクッキリとした線が書ける。そして、筆圧に応じて線の太さが変わるため、その時の気持ちや感情を込めやすい。書いた線の書き終わりにちょっとだけインクが残る感じは万年筆のようだ。

 ところが、顔料インクなので、よほど強く書かない限りは簡単には裏に抜けることはない。ただし、インクが本当にたっぷり出るので、乾くまでは触ると手に付くこともある。本当に万年筆のようなボールペンなのだ。

 とにかく、一度手に取ってもらいたい。まったく新しいカテゴリーの筆記具なのだ。

筆圧に合わせて上下するチップ部分。チップを覆っている軟らかいカバーが紙との摩擦を軽減して、さらに軽い書き味を実現
[画像のクリックで拡大表示]
強く書くと、紙の上に盛り上がるほどインクが出る。快適に書くには多少の慣れが必要かもしれない
[画像のクリックで拡大表示]
■変更履歴
「ジェットストリーム」は発売されてから13年というのは誤りで、正しくは発売されてから12年でした。また、三菱鉛筆広報の神崎由衣子氏は、正しくは神崎由依子氏でした。お詫びして訂正します。[2015/11/25 12:10]