万年筆は新入学や就職のお祝いの定番だった。その風習がまた復活しようとしている。パイロットの「カクノ」のヒットや、さまざまなインクを使えるようになったこと、手ごろな国産万年筆の登場などによって、筆記具としての万年筆が見直されているのだ。また、カクノなどの入門的な万年筆に慣れたユーザーが、もう少し本格的な万年筆に移行し始めている。

 そこで、新入学、就職の時期に合わせて、ギフトとして、また自分へのご褒美としても使える、ややグレードの高い名品を集めた。せっかく万年筆を持つなら、贈るなら、しっかりした特徴を持ち、長く使えるものを選びたい。

大ぶり30号のペン先! 驚きの書き味

PILOT「カスタム URUSHI」(8万8000円)
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 書いてみてこんなに驚いたのは、セーラー万年筆の「プロフィット21 長刀研ぎ」以来かもしれない。パイロットの「カスタム URUSHI」は、紙にペン先が触れているかどうか、というくらいの感触のまま、スルスルと文字が書けてしまう。まったく抵抗がなく、思い通りに文字が書けるのだ。

 これはパイロットの万年筆の中でも最大の30号ペン先を持つ、全長155mmの大ぶりの万年筆。だが、あまりにも軽く、しかし確実に書けるので、手の小さな人でも使いやすいだろう。また、筆圧がいらないので立ったままでメモ帳に書いても、とても書きやすくて気持ち良い。

手に持った感じだけでも大きさは分かると思う。最大径20mm、全長155mm。インクはカートリッジ、コンバーター共用
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パイロットの万年筆の中では最大の18金のペン先は、繊細な文字から大胆なタッチまで、全く筆圧を感じさせずに書くことができる
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 エボナイト(硬質ゴム)の軸に漆をコーティングした軸は、手にすっとなじむうえに耐久性も高い。大きなペン先は、パイロットの名品「エラボー」に並ぶ柔らかさだ。しかし、実際に書くと、「柔らかい」とか「しなる」とか、そんな感触を味わうよりも先に字が書けてしまう。また、筆記時にしならせる必要がないから、柔らかいかどうかも分からないけれど、シュルシュルと紙の上には線が現れる。

エボナイトに漆のコーティングを施した軸は温かみがあって手になじみ、漆のコーティング力で長持ちする。そして、大きさの割に軽く感じるのも魅力だ
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同社の「カスタム74」(写真右)とペン先の大きさを比べてみた。カスタム74も大きめのペン先を使っているモデルなのにこの差だ
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 ペン先の性能や軸の握りやすさが、当たり前のように書きやすさに直結しているから、わざわざ、「柔らかい書き味」とか「ぬらぬら書ける」などの形容がいらないどころか似合わない。万年筆が優れた筆記具であることを、これくらい実感できる製品も少ないと思う。