みなさん、こんにちは。ドミノ・ピザ ジャパンの富永です。

 ホテルチェーン「ホテルテトラ」(北海道函館市)が実施している、頭髪のない人や薄い人の宿泊料を割り引く「ハゲ割」が話題になっています。自己申告すれば宿泊料が300円から500円程度安くなるとのこと。

「ハゲ割」を実施する「ホテル テトラ」ではスキンヘッドの三浦孝司社長をモチーフにした人形が出迎える
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 その理由を調べてみると、

・ 「掃除の中で排水溝の抜け毛の処理が最も手間がかかる」と話しているのを耳にした同社の三浦孝司社長が、髪がない人の宿泊料を安くしようと即決
・ 「ハゲ」に明確な基準はなく、生え際が後退しているだけの人は微妙ながら「自ら申し出た勇気をたたえ、あまり厳密にはしない」としている

など、面白いストーリーが見て取れ、興味をそそられます。

 しかし、一方でこの企画は条件によって料金をディスカウントする、という立派なプロモーション。その観点からは単純に面白いだけではなく、ビジネス上きちんとした結果が期待されるべき。そこで、本稿ではこのユニークな企画のマーケティング的な意義・効果などについて考察してみたいと思います。

ビジネスホテルがハード以外で差異化するのは困難

 みなさんは出張などでビジネスホテルを選択するとき、どのような基準で決めているでしょうか。おそらく、最も重要なポイントとしての料金と、立地・部屋の広さ・温泉などの設備、朝食などの付随サービス、接客などソフト面のサービスを勘案して決めていく、というのが一般的な意思決定のプロセスなのかと思います。

 ここから見えてくることは、ビジネスホテルの競争は「立地」「部屋の広さ」「温泉などの設備」など、一度確定してしまうと変更がなかなか難しい要因に影響されるため、これらのポイントで競合に後れを取ってしまったプレーヤーは料金や付随サービスで差異化を狙わなければならず、厳しい戦いになるということです。

 ホテルが差異化ポイントとして後から採用できる選択肢は、(1)競争力のある料金の提示(2)付随サービスの向上(3)接客サービスの向上という3つのレバーのどれかということになります。

 このうち、(2)については、ビジネスホテルの中で朝食を打ち出しているところも多いところから、常道という印象を受けます。

 しかし、

・ 朝食が売りのポイントとして認知され、差異化の源泉となるためには、品数やクオリティー、ユニークなメニューなどある程度の特色が必要
・ 競合にコピーされやすく、そうなると差異化のポイントを失ってしまう
・ 競合を上回るメニュー開発合戦といった過剰競争が始まり、コスト圧力になる
・ 顧客が体験した朝食のクオリティーはその施設のサービスの基準点となり、次回利用時にそれがないと大きな顧客不満足要因になるので、サービスの質を簡単に下げられない

などの観点から、直観的に思うほど簡単な施策ではない、と考えられます。

 では、(3)の接客サービスの向上はどうでしょうか。

 これは、小売り・外食など店舗を保有する企業のオペレーション・マーケティングをやっている方なら、「それが簡単にできれば苦労しないよ」という実感があるのではないでしょうか。

 なぜならば、

・ サービスレベル向上のためには、マニュアルの整備といった形式もさることながら、その目的を理解し、動機付けを行うなど、マインドセットの変化が必須
・ 何百人~何千人にわたる従業員全員のマインドセットを変えるのは非常に難しい

といった属人的なハードルがあるからです。

これに加え、

・ 接客サービスといった無形のものはマーケティングしにくく、それらが認知されるまで時間がかかりやすい
・ 接客サービスは料金・設備・付随サービスに比べて決定要因としての力に欠ける

などの要素から、これも決め手とはなりにくいといえるでしょう。