“国産なのに手ごろでおしゃれな腕時計”として人気のブランド「Knot(ノット)」はいかにして生まれたのか。そのストーリーには現在のマーケティングに重要なポイントが凝縮されていた! ドミノ・ピザ ジャパンCMOの富永朋信氏がノットの遠藤弘満社長と対談し、4回に分けてその秘密に迫る。

“国産なのに手ごろでおしゃれな腕時計”として人気のブランド「Knot(ノット)」
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ドミノ・ピザ ジャパンCMOの富永朋信氏(以下、富永): 遠藤さんとはあるイベントでご一緒したのですが、そこで伺った話があまりに面白くて。マーケティングを仕事にしている私から見ても、やっていらっしゃることがあまりに見事なんです。まずは純国産腕時計の会社を立ち上げるに至った経緯をお話しいただけますか。

Knot 遠藤弘満社長(以下、遠藤): 何かを始めるときの経緯って一つではないですよね。ただきっかけとしてすごく大きかったのが、私が長年、日本の代表およびアジア全体のマーケティングディレクターを務めてきたデンマークの世界的時計ブランドがある日突然、米国にある世界的ウオッチグループに買収されたことですね。

 約10年間、ゼロからマーケットを作り上げたブランドのビジネスがある日突然なくなってしまったわけです。もちろん私どもは販売代理店という立場でしたので、売る製品が入手できなければビジネスにはならないわけです。このブランドの権利がなくなってしまったので、もちろん商品を販売できない。

 さらに私どもは販売店さんに商品を提供する立場でしたので、片方にはメーカーがあり、片方には販売店さんがいたわけです。今回はメーカーのほうを失ってしまったからビジネスができなくなったわけですけど、もう一方の販売店を失うこともあるわけですよね。そこでまず考えたのは、失うことのないブランドを自分でつくって、自分でお客様に直接販売することでした。

 自社のブランドをつくるためにはオリジナリティー、独自性がまず大事。私が手がけていたデンマークのブランドは本当にこの四半世紀の中で世界的に最も成功した時計ブランドと言われています。このブランドの成功の要因っていくつかあるわけですけど、やはり1つはいろいろな世界中の方に伺っても、まずはやっぱり「グッドデザイン」なわけですよ。20世紀の腕時計は機能の時代でしたけど、やはり21世紀になって腕時計はどんどんファッションアイテムになってきまして、そんななかでデザインが非常に重要になる。

 もう1つは「グッドプライス」。このブランドの時計は、米国では約99ドルで販売されていました。グッドデザインでグッドプライス。これが創業からわずか20年で世界トップテン入りを果たした大きな理由だったと。一方でデメリットとして挙げられていたのが、クオリティーの部分だったんです。

 それだけのリーズナブルな価格で販売するためには、どうしても生産が海外に、アジアのほうになるわけですよね。であれば、グッドデザイン、グッドプライスに「グッドクオリティー」が加われば、必ずや成功できるのではないか。そして日本人である私が日本でブランドを立ち上げるのであれば、やはり日本製にこだわるべきだろうと。

 世界中見渡しても、当時そういうブランドはマーケットにありませんでした。ハードルが非常に高いことは分かっていたんですけれども、入り口の障害が高ければ高いほどいいと思いましたね。実現したときには独占的なビジネスがつくっていけるんじゃないかと。

Knot(ノット)の遠藤弘満社長は1974年東京生まれ。米国特殊部隊用腕時計「LUMINOX」を日本に定着させ、「SKAGEN」「noon」「BERING」といった北欧ブランド時計を年間20万本の市場へと成長させたウオッチプロデューサー。2014年、「Knot」を創設
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