商品は「誰から買うか」が重要

 ブログによれば、彼はアパレル商品を買ううえで「誰から買うか」が重要であると考えており、そこから「個が発信すること」の重要性を説いています。商品・ブランドよりも短パン社長個人を立てるという手法はその考え方とよく整合しており、とても納得性が高いものです。

 また、彼は個々の客との関係性構築を最重要視し、そのためのツールとしてのSNSを重視しています。これは、消費者にとってパーソナルなスペースであるSNSをマーケティングに応用する非常に有力な考え方であり、以前の対談でSNSにおける広告展開に懐疑的であったドン・シュルツ教授の考え方にも共通するものです。

 こうしてみると、短パン社長は(誰にでもできる手法とはいえませんが)、極めて洗練されたマーケティングを実践しているといえ、2016年も引き続き目が離せません。

 最後に短パン社長のマーケティング上の機会点などを指摘して筆を置きたいと思います。

 同社のウェブサイトによると、短パン社長の会社は「mb」「Royal Ascot」「Furamu Clip」「Keisuke Okunoya」の4つのブランドを取り扱っています。

 このうち、ご自身の名を冠したKeisuke Okunoyaはソーシャルメディアのみで商品告知を行い、完全受注生産で販売を行っているとのことで、短パン社長の露出内容や世界観ときわめて整合がとれており、ひとつのブランドとして強固な世界観が形成されつつあります。これに関してはどんどん飛ばしていって突き抜けてほしいと思います。ただ、ウェブサイトに短パン社長が長いジーンズを履いている写真があったりするのは、何か意図があるとは思うのですが、若干残念です。

 一方、ほかの3つは全国各地の小売店に商品を卸す形でのビジネスを展開しているようです。これらに関しては現在短パン社長は販売店に対して手書きのレターでご自身の考えを伝える、ということをしているそうです。これは、お店のディスプレイにご自身の想いを反映させていきたいという考え方だと思いますし、そのようなことを実践するアパレルメーカーはそう多くはないでしょうから、効果があるのではないかと思います。

 今後はもう一歩踏み込み、短パン社長の世界観と整合するPOP、何か意図のある一貫したビジュアルディスプレイの構築、あるいは商品そのものなどを通じて直接消費者に自身のキャラクターや面白さを伝えられるような施策が打たれると、より統合的に(1)良い商品を作る(2)それを消費者に伝え注目を集める、のループが生まれるのではないかと思います。

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著 者

富永朋信(とみなが とものぶ)

プロフェッショナルマーケター。
日本コダック(現コダック)、日本コカ・コーラ、ソラーレホテルズアンドリゾーツ、西友などでマーケティング関連の職務を歴任。日本コカ・コーラではiModeでコカ・コーラが買える自販機システム「Cmode」の立ち上げを担当。それ以来、「購買=ブランド選択+チャネル選択」という式の解を模索し続けている。西友では同社のイメージを一変させるキャンペーンを連発した。ブランドの構造はカテゴリによって違うことに気付き、全てのカテゴリのブランド構築に対応できる方法の開拓に頭を悩ませている。座右の銘はたくさんあるが、今のお気に入りは「過ぎたハンサム休むに似たり」「渾身のアイデアは全てを解決する」。