“指名買い”のための競争はし烈

 どのようなカテゴリーでも、メーカーにとっては競合ブランドや商品と比較されることなく“指名買い”されるのが望ましいことです。なぜならば、不要な比較や競争にさらされることなく安定した売り上げが期待でき、かつ長期にわたる顧客との関係が構築できる素地が得られるからです。

 一般的にそのような状態を作り上げるため、マーケターは、

 ・競合と比べてユニークな特徴のある商品を開発し、
 ・その特徴や使用経験やパーソナリティをうまく消費者に伝え、
 ・消費者がそのカテゴリーの商品を買うときの想起集合上位にリストされるようにする

ということを行います。

 平たくいえば、(1)良い商品を作る(2)それを消費者に知らせて注目を集める、ということ。これらが奏功すればビジネスは好調に回ることになるわけですが、みなさんもよくご存じのように、そう簡単にはいきません。ビジネスには必ず競合がおり、そのなかで過酷な競争を繰り広げなければならないからです。

 アパレル業界の市場規模は9兆612億円(2009年 矢野経済研究所推計)と大きいのですが、一方で、従業員100人未満の企業が出荷額ベースで全体の8割と、小規模な企業が大半を占めるようです。資金力に勝り、研究開発費や広告費が潤沢に使える一部の大手であればともかく、そうでない企業は何とかして消費者の想起集合に入れるよう画策しなければ、指名買いが起きる状況を作るのは不可能です。

 さらにいえば、仮に業界の中で潤沢な広告費が使えるポジションにあっても、それで十分とはいえません。マーケティングコミュニケーションは全ての広告主と競合しているからです。

 毎月新しく放映されるテレビコマーシャルは2000本程度あり、このうち消費者の純粋想起(ノーヒントでも思い出せる状態のもの)は1割以下といわれています。これら2000本の広告は全てが何かを伝えようと工夫して作られたものであり、その1割に入るのは、容易ではありません。言い換えれば、コミュニケーションメッセージとして上位1割に入るインパクトがなければ、単なるノイズになってしまうのです。

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