81歳でシニア向けのゲームアプリを開発した“ITおばあちゃん”若宮正子氏が書いた本『明日のために、心にたくさん木を育てましょう』が2017年12月7日、ぴあから出版された。初版6000部だが反応がよく、発売前に重版が決定したという。

2017年12月上旬に発売された「明日のために、心にたくさん木を育てましょう」(若宮正子著、ぴあ刊、税抜1100円)
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 若宮正子さんは1935年生まれ。東京教育大学(現在の筑波大学)附属高校を卒業し、大手都市銀行に62歳まで勤めた。その後、在宅で母親の介護をしながらオンラインチャットを始めたことからパソコンの魅力に開眼し、やがてシニアのためのゲームアプリがないことに不満を抱くようになった。「それなら自分で作ってしまおう」と考え、81歳でアプリ「hinadan」を開発したところ注目され、米アップル社が年1回開催する世界開発者会議WWDC(Worldwide Developers Conference)に招聘(しょうへい)されて、ティム・クックCEOから称賛されたという。ティム・クックCEOが若宮氏に会いたがった理由について、「10歳の坊やがプログラマーだってことは知れわたってるのに、じいさんばあさんのプログラマーってそもそもダイバーシティーの中に入ってなかった。スマホの世界も飽和状態の中でシニア世代の開拓が必要ということに気づいたんじゃないかしら」と若宮氏は推測する。

若宮正子氏は1935年、東京・阿佐ヶ谷生まれ。愛称はマーチャン。「82歳ながらスケジュールはすべてスマホで管理し、メールは即レス、超多忙にもかかわらずフェイスブックはほぼ毎日アップと、いろいろ圧倒されることが多かった」(担当編集者)
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 本を出すきっかけは、ぴあの編集者がウェブニュースでこうした経緯を知り、興味を持ったこと。「リサーチすればするほど旺盛な好奇心、チャレンジ精神、自由な発想に驚かされた。きっと彼女の言葉は、人生や仕事に迷っている人やシニア目前で先行きに不安を抱えている人を勇気づけるのではないかと考えた」(編集を担当した宮内宏子氏)。制作を進めるなかで担当編集者が驚かされたのは、さまざまな依頼に対するレスポンスの速さと的確さ。たとえば表紙はイメージを伝えたその日の夜に、エクセルアートの木がメールで届き、デザイナーともども驚がくしたという。「取材中、ハッとする言葉をたくさんいただいた。自分に置き換えて考えられる言葉がたくさんあり、きっと多くの人に勇気を与えることができる本だと思う」(宮内氏)。

編集では若宮氏のチャーミングな人柄を伝えるため、彼女自身の口調を生かした文体にしたり、表紙や中面のデザインに若宮氏が編み出したエクセルアートを使用したりした
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(文/桑原 恵美子)