本屋大賞の翻訳部門と発掘部門で選ばれた2冊

5年目となった翻訳部門の第1位は、売り場面積約50平米の小さな書店が舞台

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『書店主フィクリーのものがたり』著:ガブリエル・ゼヴィン、訳:小尾芙佐

 メインの大賞と同期間に刊行された翻訳小説を対象にした、翻訳部門。2012年に特別企画として設けられて以降、毎年選出されるようになった。発表会では司会者による「残念ながら原作者の○○さんはご都合により来場していただけませんでしたが」のボケが定番化している。

 2016年の第1位『書店員フィクリーのものがたり』は、アリス島唯一の書店の偏屈だが愛すべく店主を描いた長編。好みがうるさい店主A・J・フィクリーのもとを、ある出版社の営業が訪れるが…。ハプニング続出の日々を、実在する本に対するA・Jのコメントを各章の扉にあつらえながら追っていく。

 投票した書店員からは「本屋で働いていなかったら出会うことができただろうか…出会えたことに感謝したい」「本が繋ぐ世界をみんなに味わってほしい」などのコメントが寄せられている。
(早川書房/1700円)

初回から同時開催されていた「発掘本部門」で初の“代表作”を実行委員が勝手に選出

『八本脚の蝶』二階堂奥歯

 “どうしてもお勧めしたい” 旧作(大賞の対象となる期間以前に刊行された小説)を、お勧めコメントとともによせる「発掘部門」。第1回から投票は行われていたが、結果は発表会場に現物とコメントを並べて展示されるだけにとどまっていた。

 今年は、本屋大賞実行委員が“勝手に”「発掘部門」を代表する「超発掘本」を選定。『八本脚の蝶』が「超発掘本」第一作の座を勝ち取った理由は、「私が書店員である限り、置き続けることをここに宣言します」という推薦文の力強さにあった。

 『八本脚の蝶』は、気鋭の編集者でありレビュアーでもあった二階堂奥歯がWeb上で公開していた日記をまとめたもの。2003年に自らこの世を去る直前まで公開していた感性溢れる日記に加え、生前の彼女を知る人々が彼女への思いをつづった寄稿と雑誌『幻想文学』に彼女が寄せたブックレビューが収められている。
(ポプラ社/1800円)

(文/土田みき)