Photo: Hilary Bronwyn Gayle
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 『ローマの休日』を見たことがある人も、大好きだという人も、この映画の脚本家が実は自分の名前で作品を発表できず、知人の名前を借りていたことはご存じないのではないだろうか。

 映画『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』は、20世紀半ばのハリウッド黄金期に最も人気のあった脚本家、ダルトン・トランボの実話に基づく作品だ。なぜ彼は、自分の名前で作品を発表できなくなってしまったのか? そこにはハリウッドの華麗な歴史の中で汚点になっている“赤狩り(マッカーシズム)”と、どんなに理不尽な目に遭っても、映画への思いと家族のために書き続けた1人の男の脚本家としての矜持があった。

偽名で書いた脚本がアカデミー受賞!?

(C) 2015 Trumbo Productions, LLC. ALL RIGHTS RESERVED
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 物語の始まりは1947年。米ソの関係が悪化する中、共産主義者を弾圧する赤狩りの矛先がハリウッドにも向けられる。標的にされた1人が、本作の主人公トランボ(ブライアン・クランストン)だ。自らの信念を貫き、下院非米活動委員会の公聴会で証言を拒んだ彼は、議会侮辱罪で投獄されてしまう。

 こうして国家への反逆者のレッテルを貼られ、1950年に投獄されたトランボだが、翌年に出所。しかし彼に脚本を依頼する映画会社はどこにもない。そんな彼を救ったのは、B級映画専門のキング・ブラザーズ社のフランク・キング(ジョン・グッドマン)だ。政治には一切興味がない彼は、破格の安値で「質は最低限、量は最大限」というのが信条。その依頼を受け、トランボは低予算のアクションやSFの脚本を書きまくる。

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 そんな折、トランボが書きながらも自分の名前で発表できず、旧知のイアン・マクレラン・ハンターに託していた脚本を映画化した『ローマの休日』が、1954年3月のアカデミー賞で原案賞に輝く。もちろんトランボはこの賞を受け取れなかったが、さらに1957年3月には、長年温めていた企画をロバート・リッチ名義で脚本化した『黒い牡牛』が、再度アカデミー賞原案賞を獲得するのだ。このとき授賞式に現れなかったロバート・リッチなる人物を巡り、業界内でさまざまな憶測が飛び交い始める。

 やがて少しずつだが、トランボを取り巻く環境に改善の兆しが見えてくる。

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