前回の「ルマンで勝てないトヨタがWRCでなぜ勝てる?」に続き、「世界ラリー選手権(WRC)」の「ラリー・フィンランド」で今季2勝目を果たしたトヨタ自動車の姿を目撃した小沢コージ。トヨタが勝てた裏には、元チャンピオンのマキネン監督、さらにそのウラにはあの人がいました。

【コンセプト】元チャンピオン、マキネン監督ならではの運と采配

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 というわけで「世界ラリー選手権(WRC)」復帰から半年チョイにして「ラリー・フィンランド」で想定外の2勝目を上げたトヨタのWRCチームであり、「TOYOTA GAZOO Racing(トヨタ・ガズー・レーシング)」。今回は1-3位に入りましたが、一時は1-2-3位独占も狙えたほどで、特に新人ドライバー、エサペッカ・ラッピがチームのエースである先輩ヤリ-マティ・ラトバラを打ち破ったのが印象的。とはいえ経過を振り返るとひと言では表現できないドラマチックな展開がありました。

 そしてその裏には、元4年連続WRCドライバーズ・チャンピオン、トミ・マキネン監督周囲が想像していた以上の才能と運、そして努力があったのです!

トミ・マキネン監督は1985年にラリー・デビューして以来、WRCで通算24回優勝した経験を持つ。2015年7月にトヨタ・ガズー・レーシングの代表に就任
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1-2-3フィニッシュで表彰台独占の可能性もあった

 はたしてレースが動いたのは7月29日土曜日の「day3」。前回レポートした「day2」は、まさに新人ラッピが大活躍し、全12回ある競技区間SS(スペシャルステージ)のうち8回もトップを奪って2位ラトバラに4.4秒差を付け暫定首位! すわエースドライバーの座を脅かすのか? って話でしたがここにはウラがありました。

 スキーのアルペン競技がそうであるように、WRCには出走順がレース結果を大きく左右します。アルペン競技には1本目が抽選、2本目が1本目で30位になった選手が1番にスタートとなる種目がありますが1本目、天候によっては後発有利でまさかの逆転劇があったりします。

エサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム組の「ヤリスWRC」12号車
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 WRCも同様で事実上の初日たるday2は前戦までのポイント順なのでエースのラトバラ3番目、新生ラッピ11番目と出走順に差があり、しかも路面状況的にはラッピ優位。これがおそらく彼の暫定1位を容易にしたのでしょう。

 ところがday3はday2の結果で決めるので、ラトバラ11番目、ラッピ12番目と条件がほぼ同じになります。するとここで先輩のエース、ラトバラが攻勢に出るのです。

 day3最初のSS14はラトバラがラッピに3.8秒差を付けてSSトップ! いきなり追い上げます。さらにSS15で5.4秒差を付けて、早速2本目のステージで新人ラッピを総合では逆転! ロングジャンプで有名なフィンランド名物SSのSS16こと「オウニンポウヤ1」でも差を付け、その後もSSトップを取り続けて力の差を見せつけ、後輩ラッピに「一体どうやって走ってるんだ。何をやっても追いつけない!」との悔しさをにじませた言葉まで吐かせます。

 実際、このまま行けばラトバラ1位、ラッピ2位、ユホ・ハンニネン3位のトヨタ1-2-3フィニッシュで表彰台独占!! もあり得たでしょう。

ユホ・ハンニネン/カイ・リンドストローム組の「ヤリスWRC」11号車
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