これまで、撮りたいシチュエーションや目的に合わせ、最適な機能や撮影テクニックを紹介してきた。今回は、どんな場面でも写真の印象を左右する「構図」と「色味」について解説する。撮影者のセンスが求められる部分だが、それだけに撮影枚数を重ねて経験を積むのが上達への近道となる。

 レンズの広角と望遠の境目はどこにあるのか、という質問を受けることがある。境目は標準と呼ばれるゾーンで、肉眼に近い遠近感で撮影ができる、つまり見たままを切り取れる焦点距離だ。一般的に使われる35mm判換算の焦点距離では、50mmが標準とされる。それより広い(=焦点距離の数値が小さい)のが広角で、狭い(=数値が大きい)と望遠になる。近ごろ、プレミアムコンパクトや一眼レフの標準ズームレンズの広角端は24mmが主流になっている。同じ位置からカメラを構えても、50mmの約4倍の面積を写し込める計算になる。今回作例を撮影するのに使用した「PowerShot G7 X」も、広角端は24mm相当から、望遠端は100mm相当までをカバーしている。

35mm判換算で24mm相当からの広角撮影に対応したキヤノンのプレミアムコンパクトデジカメ「PowerShot G7 X」
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 24mmの焦点距離は、室内などの狭いところを丸ごと写したいときに威力を発揮する。しかし、漠然と広い場所を切り取ると、何を写したかったのか伝わりにくい写真になってしまう。また、遠近感がなく平板な写真にもなりやすい。広角撮影時のセオリーは、被写体に一歩近付くことにある。広く写したいのに近寄ってもよいのか?と思われがちだが、近寄るのは主題あるいは副題を手前に写し込むことで遠近感を表現するためだ。写真は平面のメディアなだけに、遠近感の有無で印象が大きく変わってくる。もちろん、遠近感があるほうが写真に深みが生まれやすいのはいうまでもない。

 遠景など、手前に写すものが何もない場合は、構図で勝負することになる。実際には、手前に写すものがあっても構図は重要で、広い視界からどこを切り出すか、フレームのどこに何を配置するか、それが写真の良し悪しをもっとも決定付けるといってもいい。誰もが認めるような写真史に残る名作は、例外なく構図にスキがない。

懐かしい丸型ポストを広角端でぐっと近寄って撮影。広角特有の強い遠近感により、投入口は大きく、奥の風景は広く写っているのが分かる(24mm相当、ISO125、1/60秒、F1.8)
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これも24mm相当での撮影。建物を平面的に写したのではつまらないので、手前に通行人を写し込んでみた。しかし、通行人を静止させてしまうと建物と一体化してしまい、あまり効果がない。そこで、スローシャッターにして流してみた。手持ちで撮影しているが、手ブレ補正機構のおかげでシャープに仕上がった(24mm相当、ISO125、1/8秒、F2)
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広角といえば、遠近感の強さも特徴だ。夕方、自分の影が芝生の上に長く伸びていた。そこでカメラを持った右手を下ろし、広角端で画面ギリギリにフレーミング。脚はカメラに近いため、とても長く写った(24mm相当、ISO125、1/800秒、F4)
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