浅草で長年親しまれてきた「浅草東宝会館」「楽天地浅草ボウル」が、地上13階、地下2階の「東京楽天地浅草ビル」に生まれ変わった。2015年12月17日、その1階から4階にオープンしたのが、全国の地域の魅力が体験できる商業施設「まるごとにっぽん」。全4フロアに50店舗が出店している。
運営するのは、約70年前から浅草を中心に映画興行や不動産業を営んできた東京楽天地(東京都墨田区)の子会社である「まるごとにっぽん」。「地方が衰退しつつある今、新しいモノ作りに挑戦している地方の方々を応援する場を作りたいと考えた。腕試しの場を提供することで、地方創生の足掛かりになれば」(まるごとにっぽんの小笠原功社長)という。かつて日本有数の興行街だった浅草六区地区に再び賑わいをもたらすことも、目的のひとつ。年間集客想定は372万人以上、年間売上額は30億円を想定している。
同施設の最大の特徴は、初めて店を構えるテナントがなんと半数以上だということ。さらに東京初進出店も約8割を占めるが、その多くが「地方で1店舗のみ」「催事場やマルシェなどで不定期に販売していたのみ」という“知る人ぞ知る”店。いったいどんな顔ぶれがそろっているのか。オープン前の内覧会に足を運んだ。
1階は全国各地の“掘り出し物”が大集合
同施設の象徴といえるのが、個性的な22店が集まった「にっぽんの食市場 楽市(らくいち)」だろう。
例えば、新潟で無農薬や減農薬栽培を農家に伝える独自の活動を長年続けている「いなほ新潟」のおにぎり店や、冷やすとおいしくなるので真夏でも飛ぶように売れるという焼きイモの店「黄金甘藷」など、ユニークな店ばかりだ。
さらに直営店の食品館「蔵」ではナショナルブランドの商品を一切置かず、地方の隠れた食の名品を約1500種類以上集めたという。特に注目したいのは、元蔵人の女性バイヤーがセレクトした約300銘柄の日本酒や国産ワイン。日本酒コーナーでは、その地方でもなかなか手に入らない銘柄や、酒米を復活させた銘柄、被災後に復活した銘柄など、入手困難な酒がそろっている。
4階の「ふるさと食堂街 縁道(えんみち)」にも、東京初出店の「京もつ鍋 亀八」、全国の総菜が食べられるダイニング「畑々」など7店舗のレストランが出店している。
日本初! その場でふるさと納税が申し込める実店舗も
2階は地域発の生活用品・雑貨のセレクトフロア、3階にはイベントスペースやサービス窓口が集まったフロアとなっている。
3階で特に注目したいのは、17市町村が小区画のアンテナショップを展開しているイベントスペース「おすすめふるさと」。約2.7坪のスペースに照明と映像投影を融合させた「Space Player」を設置し、従来のアンテナショップとは異なる視覚や感覚に訴える自治体PRを行っているほか、珍しい商品がコンパクトに展示販売されている。またその場でふるさと納税を申し込める初の実店舗「ふるさと納税コンシェルジュ」を始め、多彩な体験型店舗があるのもポイントだ。
課題は高層階にあるホテルとのインバウンド対応格差!?
小笠原社長によると、同施設のメインターゲットは足元商圏の在住者、首都圏在住の40代を中心とした女性とのこと。近年、浅草に増えている外国人観光客への対応は特に考えていないようだ。約半数が“初挑戦店”で、対面販売や東京にも慣れていない地方のスタッフが多いため、外国人対応までまだ手が回らないというのが本音だろう。
一方、同じ建物の5階から上にはインバウンド対応を売りにした「リッチモンドホテル プレミア浅草インターナショナル」が同時オープンしている(関連記事「インバウンドの主役はムスリムに!? “ハラル対応ホテル”はここが違う」)。階下のまるごとにっぽんに立ち寄る外国人観光客への対応がやや不安だ。日本人の筆者が見ても珍しいものの宝庫なので、外国人観光客が興味を持つ商品も多そうだ。同施設出店をきっかけに、世界進出を果たす地方発ショップがもしかしたら現れるかもしれない。
(文/桑原恵美子)