2017年12月16日、東京・恵比寿にカプセルホテル「ドシー恵比寿」が開業した。手がけたのは、スタイリッシュなデザインを売りにしたカプセルホテル「ナインアワーズ」5店舗を成田空港や京都などで展開するナインアワーズだ。同社によると、ドシーは従来のカプセルホテルの改装を基本とした新ブランドだという。
ドシー恵比寿はJR山手線・埼京線や地下鉄日比谷線の恵比寿駅から徒歩2~3分の場所にある。ビルの2~9階で、2階にフロント、3~6階が男性用フロア、7~9階が女性用フロアという構成。ナインアワーズの特徴である白や黒を基調とした都会的なデザインではなく、板張りの壁やコンクリートむき出しの床が目を引く。都会の宿泊施設というより、まるで山小屋のような印象だ。
もともとこの場所にあった、別の会社が運営するカプセルホテルを改装したもので、カプセルユニットもそのまま使用している。クリーム色のカプセルユニットはやや年季を感じさせるが、寝具を一新しているので清潔感がある。特に女性用フロアの7~8階は光がよく入るので、明るい雰囲気だった。
ミント水をかけるサウナやクールダウン用のウォームピラーも
ドシー恵比寿の特徴は、なんといっても北欧式サウナを併設していることだろう。ホテルの3階が男性用、9階が女性用のサウナで、本場・フィンランドを手本に、熱したサウナストーンに客が水をかけて蒸気浴を楽しむ「ロウリュ」というタイプだ。温度設定は90度前後で、一般的なサウナより10度くらい高めだという。「サウナストーンにかける水に新鮮なミントの葉を入れているので、香りも一緒に楽しめる」(ナインアワーズ広報)。取材時には実際に熱したサウナストーンに水をかけるデモンストレーションが行われたが、一瞬でフロア中にミントの良い香りが漂った。
一般的なサウナにあるような水風呂はなく、天井から柱状の水が流れてくる「ウォームピラー」を採用している。ウォームピラーは一般的に温浴効果やリラックス効果を得るために設置されているそうだが、同社はこれをサウナ後のクールダウン用に導入。15度、20度、25度、30度と、季節によって温度が替わる常温のそれぞれ5段階の水温に設定されたウォームピラーがあり、ベンチに座って頭から水を浴びられる。
サウナをジム代わりに使ってほしい
北欧式サウナを作ったきっかけは「内装を依頼した建築家の長坂常氏の発案」と、同社の油井啓祐ファウンダーは説明する。これまでナインアワーズは衛生上の懸念から水を循環して使う温浴施設は作らず、カプセルユニットとシャワーに特化していた。だが、フィンランド出張でロウリュを体験した長坂氏の意見を参考に、「これまでの日本にあったような水風呂とセットのサウナではなく、ロウリュとウォームピラーという新しいサウナをドシーの特徴にしたいと考えた」(油井ファウンダー)。
日本では近年、若い世代を中心にサウナがブームになっており、サウナに関する本も出版されている。だが、そうしたブームの影響は受けていないと油井ファウンダー。「フィンランドでは単純にリフレッシュ目的で気軽に使う人が多い。日本人にもジムに通うように気軽に使ってもらいたい」と話す。
同社によると恵比寿駅周辺にはIT企業が多く、カプセルホテルを仮眠目的で使っていた人も多いという。出張やレジャーなどの宿泊客だけでなく、仮眠もしくはサウナのみ、またはその両方というように、さまざまな使い方が期待できると油井ファウンダーは意気込む。来春には、ドシー恵比寿と同じく廃業したカプセルホテルを改装した「ドシー五反田」のオープンも予定しているほか、都内での出店計画も進めているという。
ここ数年、立って歩ける広さが人気の「ファーストキャビン」や漫画喫茶の機能を付けた「コミカプ」など、個性的なカプセルホテルが増えている。カプセルホテルも清潔感やデザイン性だけでなく、なんらかの付加価値がないと生き残れない時代なのかもしれない。
(文/樋口可奈子)