2017年10月31日、京急蒲田駅に近い環状8号線沿いに、ビジネスホテル「リリーフプレミアム 羽田」が開業した。ビジネスホテルを全国に4店舗展開するフェリーチェ(沖縄県那覇市)が手がけており、ターゲットは健康と美を求める女性。売りはアパレル企業「マッシュホールディングス」とコラボした朝食やアメニティーだという。いったいどんなホテルなのだろうか。
ホテルのエントランスに入ると、正面が朝食会場になっている。ここではレストラン「Cosme Kitchen Adaptation(コスメキッチン アダプテーション)」監修のサラダやヨーグルト、グルテンフリーのスイーツなど、健康を意識したメニューを提供する。また、アメニティーは、オーガニックコスメブランド「コスメキッチン」が扱う自然派コスメブランドの「エッフェオーガニック」を全客室に完備。シャンプーやボディークリーム、歯磨き粉に至るまで、オーガニックコスメで統一している。さらに、スポーツウエアブランド「emmi(エミ)」がセレクトしたジョギングウエアやスニーカー、ヨガウエアも宿泊者限定で貸し出すという。
フェリーチェ新規開発事業部の今井宏江氏は、「開業から間もないが、女性の利用客が多い。朝食はオプションだが、注文する宿泊客が大半」と話す。だが、「羽田」と銘打つものの、実は羽田空港からは電車で5〜6駅離れた京急蒲田駅が最寄り。駅からも5分程度歩くなど、特別に立地が優れているわけではない。また、幹線道路に面しており、周囲には住宅以外ほとんど何もないのだ。羽田空港に隣接するホテルや空港からタクシーでワンメーターのホテルもあるなかで、女性向けを意識しただけで、はたして集客できるのだろうか。
訪日リピーターを狙った戦略
蒲田に出店した理由について、今井氏はニーズの多様化を挙げる。「利用者の半分はインバウンド(訪日外国人客)を見込んでいる。訪日が初めてだと安さや利便性を求める傾向にあるが、2回目以降は部屋やホテルの快適性を求めるのではないかと考えた」(今井氏)。羽田エリアであることを強調するため、パンフレットなどに蒲田という地名を出さないことも考えたが、「面白いエリアとして最近は外国人に人気があると聞いたから出している」(今井氏)とのこと。ホテル周辺に加え、都内にアクセスしやすい蒲田を拠点として東京を楽しんでもらうのが狙いだ。「ホテルの料金は周辺の相場より高めの設定だが、それでも選んでもらえると考えている」(今井氏)。
客室は全120室で、ダブル、ツイン、デラックスダブル、デラックスツインの4タイプ。さらにナチュラル、モノクローム、ホワイトと3種類のデザインに分かれている。空きがあればリクエストできるそうなので、2回目以降なら違うデザインの客室を選ぶのも楽しいだろう。
訪日客向けだと感じたのが、ルームコントロールタブレット。日本語、英語、中国語、韓国語、スペイン語、タイ語の6言語に対応していて、一台で空調やテレビの操作ができるほか、朝食会場やコインランドリーの混雑状況も分かる。「日本語が分からない旅行客はリモコンの使い方ひとつでもフロントに問い合わせる」(今井氏)といい、フロントの負担も軽減する良いアイデアだと感じた。
12月には羽田空港により近い大鳥居駅周辺にも同じブランドのホテルをオープンさせる予定だ。近いエリアに2棟設立することによって認知度を高め、相互集客も見込んでいる。
今後は赤坂、上野にも進出
運営するフェリーチェは、設立から4年で沖縄、福岡、大阪、札幌にホテルを開業し、今回が関東初進出。今後は赤坂、上野の開業も予定している。赤坂はビジネス客の利用を想定し、大浴場やスパ、屋上ラウンジを設けるほか、レストランの終日営業も考えているという。
気になるのは、タイの流通大手で百貨店やショッピングモールを運営するセントラルグループと資本提携していること。それによって、「セントラルグループのポイントカードとも提携しているので、セントラルグループや関連企業の従業員が出張時に利用するのではないか」と今井氏は話す。同社は今後、2025年までに30棟のホテルを建設する予定だという。
(文/吉成早紀=アバンギャルド)