松坂屋上野店の南館跡地に「上野フロンティアタワー」が開業し、街の風景も人の流れも大きく変わりつつある上野・御徒町エリア(関連記事「上野にJフロント×パルコの新施設、その中身は?」)。2017年11月15日、上野フロンティアタワーにほど近い老舗洋菓子店、上野風月堂の本店がリニューアルオープンした。
これまで喫茶営業と菓子販売を行っていた1階に、ライブ感のあるオープンキッチンを新設。職人が目の前で焼き上げたスイーツをコーヒーとともに楽しめるカフェを併設。また、パーラーとしてケーキやパスタを提供してきた2階はレストラン「KANAME(かなめ)」として、営業時間やメニューを大幅に見直した。
リニューアルの目玉は、上野風月堂本店限定で販売する新商品「ゴーフレーシュ」だ。焼きたての皮にとろりと軟らかいクリームを挟んでおり、もっちりしたクレープのような食感。いわば“生ゴーフル”とでも呼びたい新感覚スイーツだ。
上野風月堂といえば、丸い形のウエハースにチョコレート風味やストロベリーなどのクリームを挟んだゴーフルで知られている。日持ちすることから進物菓子の定番として支持され、全国の百貨店や量販店、空港など約550店舗で販売している。
今回のリニューアルについて、上野風月堂の大住佑介社長は「創業270年の節目と、上野フロンティアタワー開業のタイミングに合わせた。この店を訪れるためにわざわざ上野に来たくなるような新たなランドマークを目指す」と話す。だが、目玉であるゴーフレーシュは持ち帰りの場合は要冷蔵で、賞味期限は製造日を含めて2日。なぜ、あえて日持ちのしない商品に力を入れたのだろうか。
新しい定番で顧客の幅を広げたい
それには、新しい定番商品で顧客を拡大したいという同社の狙いがあった。本店では進物菓子を中心に上生菓子や洋菓子、生ケーキなど、いろいろなジャンルの菓子を幅広く販売していた。そのため「なんでも屋になり、何が売りなのか分かりづらくなっていた」(大住社長)。そこで、リニューアル後は進物菓子の取り扱いは残しながら、その他の商品を刷新。ゴーフル、カステラという2つの主力商品に的を絞り、本店でしか食べられない新スイーツとして展開した。
また、本店の利用者の約8割が50代以上だったという。そこで、若い世代も気軽に利用しやすくするため、1階をフルサービスの喫茶コーナーからキャッシュオン形式に変えた。着席もできるが、ゴーフレーシュとコーヒーだけを買ってそのまま食べ歩きをすることも可能だ。
全国で展開している進物用の商品は、「すぐに変える予定はないが、本店への客の反応を見て考えたい」(大住社長)とのこと。同店のリニューアルは、街の再開発で人の流れが変わるなか、老舗がどう生き残るかというモデルになるかもしれない。
(文/桑原恵美子)