紅茶といえば、伝統的な味やリラックス効果があるなどの印象を持っている人が多いだろう。だが米国ロサンゼルスでは、そんな紅茶のイメージを「革新的」「モダン」なイメージに変えたといわれるティーブランド「ALFRED TEA ROOM(以下、アルフレッド ティー ルーム)」が、セレブやインスタグラマーを中心に人気を集めているという。そのアルフレッド ティー ルームが、日本に初上陸。2017年10月31日、青山本店とルミネエスト新宿店の2店が同時オープンした。

「ALFRED TEA ROOM 青山本店」(渋谷区神宮前5-51-8 ラポルト青山 1、2F)。東京メトロ「表参道駅」徒歩7分。営業時間は9~21時。席数26
「ALFRED TEA ROOM 青山本店」(渋谷区神宮前5-51-8 ラポルト青山 1、2F)。東京メトロ「表参道駅」徒歩7分。営業時間は9~21時。席数26

 同店の海外進出は今回が初めて。国内外で100以上のカフェやレストラン、ホテルなどを運営するカフェ・カンパニーの楠本修二郎社長が、出張でロサンゼルスを訪れた際に同店を知り、日本への出店をオファーしたという。ドリンクメニューの開発は、カフェ・カンパニーが手がけるティーサロン「LUVOND TEA SALON」(GINZA SIXの銀座大食堂内)店主でティーマイスターの伊藤孝志氏。さらに、日本初ヴィーガンスイーツ専門店「hal cafe 229」のオーナーパティシエなどの経験を持つ岡田春生氏が監修する、100%植物性のグルテンフリースイーツなども販売する。

 米国に新たなティーカルチャーを作ったといわれるアルフレッド ティー ルームとはいったいどんな店なのだろうか。

左から「アルフレッドミルクティー(ボバ入り)」(580円)、「アルフレッドピンクドリンク」(750円)、「ボバ 抹茶ラテ」(650円)
左から「アルフレッドミルクティー(ボバ入り)」(580円)、「アルフレッドピンクドリンク」(750円)、「ボバ 抹茶ラテ」(650円)
卵、乳製品、小麦不使用でグルテンフリーの「スコーン」(280円)
卵、乳製品、小麦不使用でグルテンフリーの「スコーン」(280円)

ピンクの紅茶にびっくり

 旗艦店であるアルフレッド ティー ルーム青山本店は、青山通りの複合商業施設「ラポルト青山」の1階と2階。「ピエール・エルメ・パリ」と同じビル、と説明すると分かる人もいるだろう。隣には「エルカフェ 青山店」があり、感度が高い人に人気の飲食店が集まっていることで知られるビルだ。路地裏なので少し分かりにくいが、それがかえって隠れ家感を演出している。

インテリアには店舗のテーマカラーであるミレニアルピンクを多く用いている
インテリアには店舗のテーマカラーであるミレニアルピンクを多く用いている
内装は「フェミニンでありながら自分の意志で生き方を選択する、自由でアクティブな女性」をイメージしているという
内装は「フェミニンでありながら自分の意志で生き方を選択する、自由でアクティブな女性」をイメージしているという
店内のネオンサインも華やか
店内のネオンサインも華やか

 内装はテーマカラーのミレニアルピンク(淡いピンク色)で統一されている。1階は物販コーナーと商品を注文するカウンターと、カウンター席、テラス席がある。2階にはテーブル席と奥にソファー席があるが、あまり席数が多くないので、おそらくテイクアウトが中心になるだろう。

 ロサンゼルス本店の人気ナンバーワンメニューで、「ピンク」の通称で知られる「アルフレッドピンクドリンク」(750円)を飲んでみた。見た目は甘そうだが意外にさっぱりしていて、イチゴだけではない複雑な風味がある。オリジナルのハウスブレンドミルクティーをベースに、ビーツで着色してピンク色にしているという。さらに、ストロベリー・シロップとバニラシロップ、シナモンで甘味と香りを付け、ボバ(タピオカ)を入れているとのこと。厳選した紅茶がベースなら、いろいろと盛るのはもったいない、と思う筆者は、古い紅茶のイメージにとらわれすぎなのだろうか。

「アルフレッドピンクドリンク」(750円)。オリジナルのハウスブレンドミルクティーにストロベリーシロップとバニラシロップ、シナモンで甘味と香りづけをし、ボバ(タピオカ)を入れている
「アルフレッドピンクドリンク」(750円)。オリジナルのハウスブレンドミルクティーにストロベリーシロップとバニラシロップ、シナモンで甘味と香りづけをし、ボバ(タピオカ)を入れている

 スイーツは華やかで、ボックス入りのケーキはいかにもインスタ映えしそうだ。植物性食材オンリーで作ったピタサンドなども提供している。

卵、乳製品、小麦不使用でグルテンフリーのスイーツ。「苺のショートケーキ」(写真左)、「モンブラン」(写真奥)、安納芋とリンゴのタルト「スイートポテトタルト」(写真右)、各430円
卵、乳製品、小麦不使用でグルテンフリーのスイーツ。「苺のショートケーキ」(写真左)、「モンブラン」(写真奥)、安納芋とリンゴのタルト「スイートポテトタルト」(写真右)、各430円
ひよこ豆のコロッケ、ビーツのフムス、紫の野菜のマリネなど、植物性の食材だけを使用した「ファラフェル ピタサンド」(580円)
ひよこ豆のコロッケ、ビーツのフムス、紫の野菜のマリネなど、植物性の食材だけを使用した「ファラフェル ピタサンド」(580円)

紅茶ビジネスにはテンプレートがなかった

 米国のアルフレッド ティー ルームは、2016年5月にロサンゼルスのトレンド発信地といわれているメルローズプレイスにオープンした。アルフレッド ティー ルームの創業者でデザイン担当のジョシュア・ザッド氏は「もともと同じ通りでコーヒー店を経営していたが、コーヒーと同様に紅茶メニューも人気だったことから、紅茶だけのブランドを立ち上げた」と説明する。

 「コーヒーのビジネスにはテンプレートが存在するが、紅茶にはまだない。そこに挑戦の面白さを感じた」(ザッド氏)。ビバレッジディレクターのジョーダン・ジー・ハーディン氏は「紅茶にはもっと楽しさ、ワクワク感を出せるのではないか。それがティーのテンプレートになり得る予感がした」と話す。

アルフレッド ティー ルーム ビバレッジディレクターのジョーダン・ジー・ハーディン氏(写真左)、創立者でデザイン担当のジョシュア・ザッド氏(写真中央)、ティーマイスターの伊藤孝志氏(写真右)
アルフレッド ティー ルーム ビバレッジディレクターのジョーダン・ジー・ハーディン氏(写真左)、創立者でデザイン担当のジョシュア・ザッド氏(写真中央)、ティーマイスターの伊藤孝志氏(写真右)

ティーマイスターの伊藤孝志氏は、「いくつかのメニューはロサンゼルスと同じものだが、日本人の求める味を融合させて、新しい味を作りたい」と意気込む。ザッド氏、ハーディン氏も「抹茶を使ったメニューに関しては、ロサンゼルスの本店より日本のほうがはるかにおいしい」と認めているそうだ。

 クリーム系のトッピングを盛り、さまざまなシロップなどで香りをつけた華やかでオシャレな紅茶は、スターバックス コーヒーのフラペチーノを連想させる。そのスターバックスでは、2016年10月3日から紅茶を新たな柱として加えている(関連記事「ジュースを温めて泡立てる? スタバ驚きの紅茶戦略」)。スターバックス コーヒー ジャパンの発表によると、世界のティーマーケット(茶類全般)は、2015年の段階で1250億ドル規模。実はコーヒーよりも大きく、しかも年々拡大を続けているとのこと。紅茶を好む人は保守的で定番志向が強いといわれているが、米国発の“紅茶戦争”がその壁を打ち破るかもしれない。

「オリジナル缶バッジ」(写真左、380円)、「オリジナルピンバッジ」(写真中央、1800円)、「オリジナルステッカー」(写真右、450円)。ほかにバッグなどのオリジナルグッズも販売している
「オリジナル缶バッジ」(写真左、380円)、「オリジナルピンバッジ」(写真中央、1800円)、「オリジナルステッカー」(写真右、450円)。ほかにバッグなどのオリジナルグッズも販売している
「グラバー(ミックスナッツ/ストロベリー/ピンク)」(写真左、各380円)、「グラノーラ(フルーツ/キャラメールマキアート/チョコファッジ)」(写真右、各350円)
「グラバー(ミックスナッツ/ストロベリー/ピンク)」(写真左、各380円)、「グラノーラ(フルーツ/キャラメールマキアート/チョコファッジ)」(写真右、各350円)

(文/桑原恵美子)

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