“日本初のキャンプファイヤー・ダイニング”をうたうレストランが7月、東京・自由が丘にオープンしたという。近年はグランピング(ぜいたくなキャンプ)が話題となっているが、キャンプファイヤー・ダイニングとは耳慣れない言葉だ。
たき火の回りでマイムマイム? 火を見ながらみんなでトーク? 妄想は膨らむばかり。都心でどのようにキャンプファイヤーを楽しむのか。それを検証すべく、取材に向かった。
入り口はいたって普通
「THE BANFF(バンフ)」は自由が丘南口から徒歩1分、自由が丘でもにぎわいの多いエリアの雑居ビルの2階にある。近年はやりの屋上バーベキューとは違うようだ。
“たき火”でステーキを焼き上げる
階段を上って店内に入ると、さっそくキャンプファイヤーを探した。入り口から見て正面のラウンド上のカウンターの奥に“たき火”はあった。店のサイズに合わせて特注したというまき専用グリルで、看板メニューのリブロースステーキやロティサリーチキンを焼き上げて提供するという。
実物の火は、キャンプファイヤーというにはずいぶん小さい印象。店内に窯があるピッツェリアや暖炉を売りにしているレストランに近い感覚だ。まきによる遠赤外線効果を利用した調理法「ウッドファイヤードグリル」を採用しているが、一般的な言葉ではない。そこで、子どもでも知っているキャンプファイヤーをコンセプトにしたそうだ。
「“キャンプファイヤーをしているときのように、火を囲んで仲間や家族と楽しく食事をする”のがコンセプト」と、バンフを手がけるCALMEの釜谷道夫代表は説明する。同社は都内でバーを1店舗運営しているが、新たな店を手がけるにあたり、家族連れを含めた幅広い層をターゲットにしたかったという。
自由が丘は都心でありながら大型の商業施設はなく、雑貨店や飲食店が街に点在している。さらに両隣の駅とつながるように2キロ近く緑道が続いている環境は渋谷や新宿と違い、自然と商業が融合していると考え、出店を決めたそうだ。
実は「香り」がキャンプファイヤー!?
看板メニューのリブロースステーキはナラ材で焼き上げる。チョコレートクリームとメレンゲを瓶詰めしたデザート「キャンピング・スモア」にはリンゴのチップを使った煙で香りを付けているという。
見た目だけでなく、「香り」が楽しめるのもポイント。煙を無害化して排出する装置をつけているため、店内に漂うのはまきの香りのみ。まきの香りは、まさにキャンプファイヤーそのもの。ログハウス調の内装も手伝って、自由が丘の雑居ビルであることを忘れてしまう。ここが最もキャンプファイヤーらしいところといえるだろう。
(文/樋口可奈子)