2017年8月30日、JR東日本グループの鉄道会館が手がける東京駅構内の商業施設「グランスタ」「グランスタ丸の内」の第4期エリアが開業した。2016年7月から順次開発を進めていたが、今回9店舗のオープンによって、グランドオープン。(関連記事:「鉄ちゃんも喜ぶ“東京駅限定文房具”、スタンプが充実」)。改札内「グランスタ」の新エリアと、改札外の新施設「グランスタ丸の内」を合わせて全55店舗、売り場面積は約3600平米となった。

 今回オープンした9店舗は、丸の内地下中央口改札外に南北にまたがっている。北側エリア(改札を出て右手)には、広さ約450平米、席数約110席の「EATALY グランスタ丸の内店」(以下、イータリー)と、全国21店舗の中で最大規模となる「茅乃舎 東京駅店(グランスタ丸の内)」(以下、茅乃舎)が出店。一方、南側エリア(改札を出て左手)には、小規模ながらユニークな店舗が集結。全国初登場ブランドのパッタイ(タイの焼きそば)専門店「マンゴツリーキッチン “パッタイ”」(以下、パッタイ)、都内の人気ベーカリーのパンを集めたカフェ「GARDEN HOUSE CAFE」(以下、ガーデンハウス カフェ)がオープンした。

青枠で囲われた部分が第4期エリア。営業時間は「EATALY グランスタ丸の内店」「茅乃舎 東京駅店(グランスタ丸の内)」など一部の店舗を除き、月曜~土・祝日が7~22時、日曜・連休最終日の祝日は7~21時
青枠で囲われた部分が第4期エリア。営業時間は「EATALY グランスタ丸の内店」「茅乃舎 東京駅店(グランスタ丸の内)」など一部の店舗を除き、月曜~土・祝日が7~22時、日曜・連休最終日の祝日は7~21時

 鉄道会館の井上進社長は、新エリアのコンセプトを「広がる東京駅時間」と説明。「グランスタはもともと、食物販や飲食が主流のスポットだった。だが、これまでの東京駅にはなかった新しい時間の過ごし方を提案するため、第1期増床では雑貨を、第2期増床ではサービスを中心に展開した。第4期ではレストランを中心に、改めて食を追求している」(井上社長)。

 JR東京駅丸の内地下口中央改札は1日に平均約12万人が通行し、休日には観光客でにぎわうポイントだ。オープン直前の内覧会で9店をチェックした。

ライブ感あふれる「EATALY グランスタ丸の内店」

 オープンと同時に人気スポットになりそうなのが、「イータリー」だ。売り場の広さもさることながら、驚かされるのがそのライブ感だ。

イータリーの営業時間は、月~土曜・祝日が7~23時(物販)、11~23時(レストラン)。日曜と連休最終日の祝日が7~22時(物販)、11~22時(レストラン)
イータリーの営業時間は、月~土曜・祝日が7~23時(物販)、11~23時(レストラン)。日曜と連休最終日の祝日が7~22時(物販)、11~22時(レストラン)

 ガラス張りの「生パスタラボ」では、目の前でパスタを打つ様子を見ながら、できたての生パスタを店内で食べられる。他にも、注文ごとにクリームを詰めて販売するシチリアの伝統菓子カンノーリや、コーヒー&バールスタンド、ジェラートスタンドがあり、まるでイタリアの市場にいるようだ。イタリアで人気のクラフトビールや、自社ワイナリーを中心としたワインのコーナーもあるが、近隣の日本橋三越店など、イータリーに足を運んだことがある人にとっては、食料品の扱いが少ない印象を受けるかもしれない。

シチリア島発祥の伝統菓子カンノーリを実演販売する日本初の「カンノーリバー」を設置。生パスタラボで成型した生パスタ生地を厨房で揚げ、注文後に目の前でクリームを詰めて両端にトッピングする(税込み540円~、以下、価格は全て税込み)
シチリア島発祥の伝統菓子カンノーリを実演販売する日本初の「カンノーリバー」を設置。生パスタラボで成型した生パスタ生地を厨房で揚げ、注文後に目の前でクリームを詰めて両端にトッピングする(税込み540円~、以下、価格は全て税込み)
店内中央には円形のカウンターがあり、一周すれば軽食がそろうスタイル
店内中央には円形のカウンターがあり、一周すれば軽食がそろうスタイル
グループ会社が自社ワイナリーを持っており、ワイン売り場では試飲も気軽にできる。イタリアで圧倒的な人気を持つクラフトビール「バラデン」からも、4銘柄を販売
グループ会社が自社ワイナリーを持っており、ワイン売り場では試飲も気軽にできる。イタリアで圧倒的な人気を持つクラフトビール「バラデン」からも、4銘柄を販売

 今回、実演と飲食が中心の店舗にしたのには理由がある。イータリー・アジア・パシフィックの甕(もたい)浩人社長は、2008年に日本1号店としてオープンし、2014年3月に閉店した「イータリー代官山」について、「豊富な商品バリエーションを売りにしていたが、調理方法が分からないため購入に至らない場合が多かった」と説明する。(関連記事:「イタリア食材専門店「イータリー」が日本上陸、“食育フードマーケット”とは」。そこで、実際に目の前で作るプロセスを見せながら食べられるようにすることで、イタリアの食材の魅力を知ってもらいたいと考えた。

 「イタリアの良質な食品は小規模な生産者が多い。生産を続けるためには、消費者が買い支えることが必要。そのためにも、イタリアの食材の魅力を体感していただくことが必要だと考えた。この店を、スタッフとお客さんがイタリア愛を共有できる場所にしたい」(甕社長)。

ピッツア&フォカッチャは常時7種類を販売。地方によっても違いがあるので、毎日違う種類を焼いて提供するという
ピッツア&フォカッチャは常時7種類を販売。地方によっても違いがあるので、毎日違う種類を焼いて提供するという
生パスタラボでは通常6種類前後の生パスタを製造。量り売りも行う
生パスタラボでは通常6種類前後の生パスタを製造。量り売りも行う
生ハムは常時約20種類、チーズは常時約40種類ほどをそろえている
生ハムは常時約20種類、チーズは常時約40種類ほどをそろえている
クリーム状のモッツァレラを包んだブッラータチーズを丸ごと1個乗せたピザ「ブッラータ」(1966円)
クリーム状のモッツァレラを包んだブッラータチーズを丸ごと1個乗せたピザ「ブッラータ」(1966円)
濃厚な手作りジェラートはトリプルで648円
濃厚な手作りジェラートはトリプルで648円
110席あるイートインスペースからも生パスタラボが見える
110席あるイートインスペースからも生パスタラボが見える

“ライトな手土産”に特化した「茅乃舎」

 全国で21店舗目の出店となる茅乃舎は、これまで最大規模だったミッドタウン店(約211平米)よりさらに広い約280平米(関連記事:「東京ミッドタウン、大リニューアルで“地方発信型ショップ”に!?」)。そして初のエキナカ(駅構内)出店となる。

茅乃舎の営業時間は月~土曜・祝日が8~22時、日・祝日最終日8~21時。併設の「汁や」は11時オープン
茅乃舎の営業時間は月~土曜・祝日が8~22時、日・祝日最終日8~21時。併設の「汁や」は11時オープン

 初のエキナカ、しかも巨大ターミナル駅という立地から、同店では手土産需要に着目。「時間をかけずに買える、手軽でカジュアルな手みやげ」3シリーズを開発し、東京店限定商品として販売する。そのひとつが「1袋だし」。1袋にだしパックが1つ入っており、自由に組み合わせられる。だしとレシピをセットにした「お料理だし箱シリーズ」は、作りたい料理から選ぶスタイル。米菓の専門店「赤坂柿山」とコラボしたおかきシリーズも東京駅店限定だ。

 店舗入り口には、味見してすぐに購入できる「対面だしスタンド」があり、日常使いのギフトを手早く決めて購入したい、多忙な人に喜ばれそうだ。ミッドタウン店に続き、店内に飲食スペース「汁や グランスタ丸の内店」を併設しており、博多雑煮や九州の豚汁などを提供する。

5種類のだしなどを味見し、その場で購入できる「対面だしスタンド」
5種類のだしなどを味見し、その場で購入できる「対面だしスタンド」
ミッドタウン店に続き、店内に飲食スペース「汁や グランスタ丸の内店」を併設。東京駅店限定「博多雑煮セット」(写真、1580円)のほか、「九州の豚汁セット」(1280円)、「十穀汁セット」(1280円)などを提供
ミッドタウン店に続き、店内に飲食スペース「汁や グランスタ丸の内店」を併設。東京駅店限定「博多雑煮セット」(写真、1580円)のほか、「九州の豚汁セット」(1280円)、「十穀汁セット」(1280円)などを提供
東京店限定商品「1袋だし」は、人気の「茅乃舎だし」(100円)を始め、全8種類(各8g、100~150円)で、自由に組み合わせてギフトにできる
東京店限定商品「1袋だし」は、人気の「茅乃舎だし」(100円)を始め、全8種類(各8g、100~150円)で、自由に組み合わせてギフトにできる
東京店限定商品「お料理だし箱シリーズ」は全部で4種類(1000~1100円)。それぞれの箱ごとに味噌汁やおつまみなど料理のテーマがあり、そのテーマに沿った料理カードとだしがセットになっている
東京店限定商品「お料理だし箱シリーズ」は全部で4種類(1000~1100円)。それぞれの箱ごとに味噌汁やおつまみなど料理のテーマがあり、そのテーマに沿った料理カードとだしがセットになっている
米菓専門店「赤坂柿山」と共同開発した、だしを使ったオリジナルおかき。「薄焼きだしおかき(6枚入り)」(600円)、「おかきセット(36枚入り)」(3456円)のほか、「豆かきもち(5枚入り)」(500円)などもある
米菓専門店「赤坂柿山」と共同開発した、だしを使ったオリジナルおかき。「薄焼きだしおかき(6枚入り)」(600円)、「おかきセット(36枚入り)」(3456円)のほか、「豆かきもち(5枚入り)」(500円)などもある

手土産の穴場は、南側エリアにある!?

 北側エリアの2店舗に対し、やや手狭な店が多い南側エリア。だが、手土産の穴場ともいえるユニークな店舗がそろっている。ベーカリーカフェ「ガーデンハウス カフェ」は鎌倉で人気のレストラン「ガーデンハウス」の新業態。「ログロード代官山」でも大人気の姉妹店ベーカリー「ガーデンハウス クラフツ」のパンだけでなく、都内の人気ベーカリー10店舗のパンが買える「パンのセレクトショップ」だ。人気ベーカリーを代表するパンがそろうとあって、パン好きには感涙ものの立ち寄りスポットになるだろう。パン好きへのお土産としても喜ばれそうだ。

「ガーデンハウス カフェ」には60席のカフェスペースもあり、鎌倉本店で人気のサラダやデリも味わえる
「ガーデンハウス カフェ」には60席のカフェスペースもあり、鎌倉本店で人気のサラダやデリも味わえる
オープン記念として「日本のパン」コーナーを特設。あんぱんやメロンパン、カレーパンなど日本独自のパンを、人気ベーカリーがアレンジしたオリジナル品を販売している
オープン記念として「日本のパン」コーナーを特設。あんぱんやメロンパン、カレーパンなど日本独自のパンを、人気ベーカリーがアレンジしたオリジナル品を販売している

 全国初登場という、パッタイ(タイの焼きそば)専門店「パッタイ」は、タイ料理店マンゴツリーの6店舗目となる姉妹店。日本のタイ料理店で提供されるパッタイは一般的に乾麺が使われているが、同店ではマンゴツリーが提携工場と開発したオリジナル生米麺「クイッティオ」の焼きそばが食べられる。生の米麺のモチモチとした食感は新鮮。モーニングからタイ料理が食べられ、テイクアウトも充実しているので、気軽にタイ料理が食べられるのもうれしい。

「パッタイ」(タイの焼きそば)専門店「マンゴツリーキッチン パッタイ」はつなぎを使わないオリジナル生米麺のモチモチした食感が楽しめる。写真は「海老のパッタイ」(980円、スープ付き)
「パッタイ」(タイの焼きそば)専門店「マンゴツリーキッチン パッタイ」はつなぎを使わないオリジナル生米麺のモチモチした食感が楽しめる。写真は「海老のパッタイ」(980円、スープ付き)

 「パッタイ」の隣にある韓国料理店「ハンビジェ」はキンパ(韓国風のり巻き)を豊富にそろえている。その先の和総菜の店「「和saiの国」もテイクアウト総菜や弁当が多く、テイクアウト・ストリートと呼びたいほどの充実度だ。

色とりどりのキンパが目を引く韓国料理店「ハンビジェ」
色とりどりのキンパが目を引く韓国料理店「ハンビジェ」
新感覚のデリがそろう「今日のごはん和saiの国」はイートインスペースも併設
新感覚のデリがそろう「今日のごはん和saiの国」はイートインスペースも併設

 地産品ショップ「のもの」は、紀ノ国屋の小型店「キノクニヤ アントレ」と一体型のショップ。「のもの」と「紀ノ国屋」が同じJR東日本グループということで実現した店舗だという。2店がコラボした限定商品「東京ツインクリームパン」も手土産として話題になりそうだが、注目したいのは同店オリジナルの「のものギフト」だ。店内の商品を詰め合わせた「のものギフト」は他の店舗でも販売しているが、ここでは東北の県ごとにセレクトした「各県のものギフトセット」を販売している。北側エリアのイータリー、茅乃舎の物販がギフトの“王道”だとすると、南側エリアは“穴場”といえるだろう。

地産品「のもの」と紀ノ国屋の小型店「キノクニヤ アントレ」のコラボレーションパン第1弾「東京ツインクリームパン」(237円)。「のもの」で販売している長野県小県(ちいさがた)の長門牧場のキャラメルジャムを使ったキャラメルクリームと紀ノ国屋の豆乳クリームを組み合わせたパン
地産品「のもの」と紀ノ国屋の小型店「キノクニヤ アントレ」のコラボレーションパン第1弾「東京ツインクリームパン」(237円)。「のもの」で販売している長野県小県(ちいさがた)の長門牧場のキャラメルジャムを使ったキャラメルクリームと紀ノ国屋の豆乳クリームを組み合わせたパン
東北6県の魅力を詰め込んだ「各県のものギフトセット」。魅力的な組み合わせが多い
東北6県の魅力を詰め込んだ「各県のものギフトセット」。魅力的な組み合わせが多い
ジュースキッチン「のものジュース“百果百菜”グランスタ丸の内店」では、野菜ソムリエが地域の素材を厳選したオリジナルジュースを常時8種類提供(280円~)
ジュースキッチン「のものジュース“百果百菜”グランスタ丸の内店」では、野菜ソムリエが地域の素材を厳選したオリジナルジュースを常時8種類提供(280円~)

 鉄道会館営業本部の森嶋晶子氏は、丸の内地下中央口改札エリア開発の狙いを「大手町、日本橋など周辺エリアとのつながり強化。食のエリアをオープンさせることにより、駅の通路を街につながる空間にしていきたい」と話す。魅力的な店と新しい試みが多かったこのエリアは、東京駅の地下にまた新たなにぎわいを生み出しそうだ。

(文/桑原恵美子)

この記事をいいね!する